物流・運送会社などは、従業員の労働時間などの規制に注意しておかなければ、労働基準監督署による立ち入り検査などで指摘されることになってしまいます。
「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」では、時間外労働の上限規制が適用される2024年4月までのできるだけ早い時期に、すべての事業者の全ドライバーの時間外労働を960時間以内とすることを目指すとされています。
いずれにしても時間外労働時間の上限規制は年960時間以内となるため、労働基準監督署の立ち入り検査で指摘されないような運用が必要です。
法律に明記された労働時間の上限を超えてしまうと、罰則規定が適用されてしまいます。しかしドライバーの場合、実際の休憩時間を把握することは容易ではありませんので、労働時間を把握することも困難といえます。
そのため労働基準監督署の立ち入り検査では、拘束時間だけ遵守できていれば問題ないだろうと考える運送業経営者もいるようです。
しかし実際には労働時間を正確に把握することを求められることもあるため、注意しておきましょう。
労働基準監督署の立ち入り調査は様々な物流・運送会社で実施されていますが、グループ会社数社に分社化し法律上、別会社として運営している会社もあります。
その場合、労働基準監督署では別々の会社とみなさず、グループ会社として立ち入り調査を実施することもあるようです。
実際に立ち入り調査の対象となった運送会社は3社で構成されており、経営者は同じで拠点・本社もほとんど同じ状態で設立されていますが、仕事内容は雑貨・鋼材・輸送などバラバラです。
両数も均等に保有していますが、グループ全体では200台を超える規模となっているからか、3社とも労働基準監督署の立ち入り調査の対象となり実施されています。
法人は別でも同時に立ち入り調査が行われるのは、労働基準監督署もグループ会社であることを理解した上でのことのようです。
遠距離輸送などで1か月80時間という残業が存在することなど認めた上で、すべて法律通りに運営することは難しいと理解を求めたものの、3社とも是正勧告を受けてしまいます。
数年で台数が増え管理体制に問題が発生したため分社化し、一部は仕事内容など改善させ労働時間の短縮を図る努力をしても、荷主から要望があれば長距離輸送を避けられないこともあります。
それにより月の残業時間が80時間を超えてしまうことを危惧していても、是正することは難しく対応に困っているのが現状のようです。働き方改革法に対応しなければならないことは理解できていても、完全に改善させることは難しいのが実情といえるでしょう。