運送業で正社員として働いていた方が、定年を迎えた後でも再雇用制度により、引き続き働くことができます。
しかし運送会社側にとっては、再雇用制度の内容が複雑でわかりにくいと感じることも少なくないため、そもそもどのような制度なのかその内容をしっかりと理解しておきましょう。
「再雇用制度」とは、正社員として働いていた方が定年に達したとき、従来までのように正社員ではなく別の雇用形態で再度雇用されることです。
一般的な再雇用制度は、まず正社員として60歳で定年を迎え、その後、65歳まで1年契約で有期雇用契約を結び更新していく形式といえます。
「高年齢者雇用安定法」では、希望するすべての正社員に対し、65歳まで就労の機会を与えることが企業に義務付けられました。
そのため定年後は有期雇用形態で再雇用されることが多いですが、正社員と区別するために、「嘱託社員」「シニア社員」「再雇用社員」といった呼び方が使われることが少なくありません。
再雇用制度の「給与」や「仕事内容」は、定年前に正社員として働いていたときの条件と一定程度は連続性を求められます。
そのため定年後に労働者を再雇用するときには、次の点に注意しておくようにしましょう。
パートタイム有期雇用労働法第8条では、有期雇用社員と正社員を比較したとき、不合理な待遇差をつけることは禁止しています。
このルールは有期雇用の再雇用でも適用されるため注意しましょう。
ただし、老齢厚生年金の支給があることを考慮し、正社員より一定程度年収を下げることは合法とされていますし、仕事の内容や責任の程度が正社員と異なるときにはそれに応じた給与の設定をしても問題ありません。
合理的な理由もなく、正社員に対しては支給している手当を、再雇用社員には支給しないということはできません。
そのため、再雇用制度で手当の一部を支給しない場合には、手当の趣旨から見て不支給が不合理にならないか十分に検討することが必要といえます。
再雇用社員でも皆勤を奨励する必要性はあるため、再雇用社員だけに皆勤手当などを支給しないのは違法とされます。
住宅手当は住宅費に充てるためのものであり、家族手当は家族を扶養するための生活費の補てんとして扱われるものであるため、再雇用社員にのみ支給しないのは適法とされます。
通勤手当も、通勤費用を補助することは再雇用社員でも必要なことのため、正社員には支給しているのに再雇用社員のみ不支給とすることは違法と判断されます。