運送業の従業員の過失で物損事故が起きたとき、運送会社が受けた損失は従業員に請求できるのか気になるところでしょう。
実際、従業員の過失の程度や、会社の加害行為予防や損失分散などへの対策などを考慮した判断となりますが、従業員の故意でなければ全額請求することは困難と考えられます。
そこで、運送業で従業員の過失で物損事故が起きたときの阻害賠償の程度と、請求できる範囲について説明していきます。
運送業の従業員で物損事故が起こしたとき、その事故が故意または過失により他人の権利や法律上保護される利益を侵害したものであれば、損害賠償責任を負うことになります。
ただし運送会社と従業員が損害について公平に分担するべきとされており、信義則上、相当と認められる限度を運送会社から従業員に請求するべきとされています。
会社が加害行為を予防することや損失分散について事前措置を講じているかによって、従業員に請求する賠償額が変わってくるといえるでしょう。
使用者には危険責任と報償責任があり、たとえ事前措置を講じていても報償責任は残るため、損害額すべてを賠償請求することはできません。
そのため車両運転の場合なら、過重労働にならないための勤務時間や休憩時間の工夫や、安全装置設置など予防策を取り、さらに教育・指導で安全に関する防止策を講じ、損害保険に加入するなどの対策が必要です。
事前措置を運送会社が講じているかによって、損害賠償額の範囲が決まることになります。
仮に事前措置を講じて危険責任は減少したとしても、従業員を雇用することで利益を得ている運送会社は、収益活動から発生する損害に対する報償責任が残ります。
そのため労働者に対し、損害全額を賠償してほしいと求めることはできないと考えられるでしょう。
事前措置を講じ、たとえば運送会社の就業規則に、全額賠償に関する定めをしていたとしましょう。
しかし実際に損害が発生したとき、従業員が全額賠償しなければならなくなるケースは少ないと考えるべきです。
運送会社が事前措置を講じること社会的に求められていることであり、企業防衛の観点からでも必要不可欠といえます。
さらに事故を生じさせないシステムを構築し、物損事故を防ぐ仕組みを作っておくようにしましょう。