トラック運送事業者の多くは、国土交通大臣の定める「標準貨物自動車運送約款」を用いていますが、この運送約款は運送契約の基礎とされるもので、特段の定めがないときには約款に従って処理されることになります。
法的効力を有することであることも踏まえ、たとえば飲料配送で事故・急ブレーキ・路面環境などによる貨物の毀損が生じたとき、賠償金などの処理はどうすればよいか確認しておきましょう。
「標準貨物自動車運送約款」では、適用細則として次のとおり飲料配送による貨物毀損の範囲・賠償の範囲を定めています。
「標準貨物自動車運送約款」の第47条1項・2項には、「損害賠償の額」として次のとおり定めがされています。
“第47条
貨物に全部滅失があった場合の損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における貨物の価額によって、これを定めます。
2 貨物に一部滅失又は損傷があった場合の損害賠償の額は、その引渡しがされるべき地及び時における、引き渡された貨物の価額と一部滅失又は損傷がなかったときの貨物の価額との差額によってこれを定めます。“
飲料配送中に貨物毀損が発生したときの基本的な考え方としては、個々の段ボールに梱包されている飲料(缶・ペットボトルなど)の毀損の有無・範囲で判断し、損害賠償も毀損範囲に対し発生することになります。
実務では、段ボールを開封し毀損しているか、現場で確認することは現実的とはいえません。
そこで、段ボール外観から缶・ペットボトルなど中の毀損の有無・範囲を推定するために、飲料メーカーと運送事業者間で箱の擦れや折れの程度などで毀損範囲を推定する判断基準を設けておくといった方法も取り得るところといえます。
もしも毀損があると判断された部分と毀損のない部分が同一のパレット内に混在しているときには、パレットを崩し分別すると作業効率が悪くなります。
そのため、パレットに載っている箱すべてをまとめて、流通させないといった対応もありうるといえるでしょう。
このような判断は効率性の観点で見た場合ですが、運送事業者の損害賠償の範囲は事前に決められた判断基準に基づき推定される毀損範囲で検討することになります。