運送会社の中には、安全運転を守りつつ仕事に励んだドライバーに対し「無事故手当」を支給することもあるでしょう。
ただ、無事故手当を支給することや不支給などをめぐる、労使のトラブルなども見られます。
安全運転を根付かせ事故を削減することが無事故手当を支給する目的といえますが、法律の知識や支払うときに気をつけなければならないことを把握しておかなければ、会社運営の安全を脅かすことになります。
そこで、運送会社がドライバーに対し無事故手当を支給するとき、何に注意すればよいのか説明していきます。
労働基準法に「無事故手当」に関する規定はなく、もし運送会社が支払わなくても違法にはなりません。
ただしトラック運送業界で従来から根付いている手当のため、安全運転を守り無事故だったドライバーに対し、無事故手当を支給するケースも少なくないといえるでしょう。
もしも運送会社がトラックドライバーに無事故手当を支給するときには、次の3つの注意点を十分理解しておくことが必要です。
もしも事故が起きたときの損害賠償について、運送会社とドライバーの間で訴訟が起きたときには、すべての責任をドライバーに負わせるべきではありません。
事故が起きた原因がドライバーの過失によるものだとしても、ドライバーは会社の指示により業務に従事しているからです。
ドライバーの責任は、労働条件・業務内容・運送会社の事故予防措置などにより決まるため、トラックの修理代などドライバーに全額負担させることは違法になると理解しておいてください。
労働基準法の第17条には、
“使用者は、前借金その他労働することを条件とする前貸の債権と賃金を相殺してはならない。”
とあり、さらに第24条には、
“賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。”
という規定があります。
損害賠償金も運送会社が一方的にドライバーの給料と相殺できないと考えられるため、天引きしないようにしましょう。
運送会社が無事故手当について、雇用契約書や労働条件通知書などに明確に記載していないときや、ドライバーに周知していないときには誤解が生まれることもあります。
そのためドライバーに文書で交付し、口頭でも説明を行うなど認識の違いが生まれないようにしておくことが大切です。