運送業では、交通事故による業務災害が最も多いと想像しがちであるものの、実際には荷役に関連する作業による災害が多いといえます。
ECサイトの普及により宅配便利用者が増えたため、宅配便取扱個数も増加傾向にあることは運送業にとって喜ばしいことである反面、労災として扱われる件数も増えている状況です。
そこで、運送業で多く見られる業務災害について解説していきます。
運送業は業務災害が起きやすいといえます。
いろいろな業種の中でも死傷者数が上位で、建設業や製造業に次いで労災が多く発生しています。
荷物を運搬中に起きる交通事故や、荷物をトラックに積むときや降ろすときにも事故が起きることもあり、さらに長時間運転で同じ姿勢が続くことによる腰や首の痛みなどが発生することもあります。
長時間労働により疲労が溜まり、ストレスや過労などによる精神疾患や過労死も労災として挙げられることもあるなど、様々です。
業務中や通勤中のケガや疾患などは、労働災害として認められると考えられますが、一定の要件を満たすことが必要です。
運送業の場合、交通事故によりケアが負うケースが典型的な労災に認定される事例と考えられますが、他にも長時間運転によりドライバーが腰痛になったときや荷物を積み下ろすときに発生した業務事故も労災に含まれる場合があります。
具体的に労災に認定されるために満たさなければならない要件として、次の つが挙げられます。
・業務遂行性
・業務起因性
それぞれ説明していきます。
使用者と労働者が労働関係を結んでいることが必要であるため、業務委託契約では要件を満たさないといえます。
業務を原因とする災害で、疾病・傷害との因果関係があることが必要であるため、業務中の私的行為による災害は対象になりません。
重量物を取り扱う業務や腰部に過度の負担をかける不自然な作業姿勢による業務、その他腰部に過度の負担がかかる業務による腰痛は労災の対象となります。
ただ、長時間運転を続けたトラックドライバーが腰痛になっても、上記の要件を満たすとは言い切れません。
労災で補償されるのは業務による災害であることが必要なため、腰痛が労災と認定されるには、約3か月以上長距離運転手として稼働し、筋肉などが疲労したことで腰痛を発症していることが必要です。
ドライバーとして運転業務に携わるよりも前から腰痛がある場合など、業務を原因していないため対象に含まれない場合もあると留意しておいてください。