裁判所は会社解散が新会社設立で同じ営業を引きつぐ偽装解散でなければ、解雇することは有効と判断しているようです。
では営業譲渡の場合にはどうでしょう。物流企業などで働いている方の雇用契約が承継されるかが気になるところですが、この場合には従業員は譲受会社で働き続けることが可能と考えられます。
営業譲渡での「営業」という部分に雇用契約は含まれるのかというと、雇用契約やそこから発生する債権・債務を承継することを双方が合意していれば雇用契約も承継されます。
合意していない場合には、雇用契約から発生する債権・債務も承継されないため引き続き従業員が譲受会社で働き続けることは難しくなるでしょう。
なお、事業者の立場としては契約書などに雇用契約で発生する債権・債務は承継しないことを特約として付しておかなければ、後でトラブルになることも予想されますので注意してください。
物流企業や運送会社などでも、解雇された元従業員などが労働基準局や運輸支局に駆け込むケースはめずらしくありません。
どのような理由があるにしても、従業員を解雇するときには細心の注意を払うことが必要といえます。
実際、荷主からミスが多いことを理由にドライバーなどを交代してほしいという要請を受けることもあります。
事業者としてはドライバーに状況を説明し、改善させるように促すこととなりますが、肝心のドライバーがその意思を示さずトラブルになるケースもあるようです。
ドライバーのことは大事だとしても、そのドライバーのために仕事を失うことになっては、他の従業員を路頭に迷わすことになりかねません。
心を鬼にして退社を促し、ドライバーも納得した様子で受け入れ円満に解決できたと思っていても、その後弁護士名で書類が届き残業代未払い分が請求されるといったこともあるようです。
何も訴えられる覚えはなかったとしても、仕事上、問題を大きくしたくないと交渉を進め、請求された金額の一部を支払って解決させるといった事業者もいます。
本来であれば仕事を続けることができなくなったのは元ドライバー本人に問題があったからであり、自業自得のはずです。
荷主の信頼を失った損害を請求したいほどなのに…と納得できないまま応じるしかないのは腹立たしいことといえるでしょう。
後でトラブルにならないように、たとえ解雇でなくてもドライバーが会社を辞めるときには細心の注意を払い、慎重な対応が欠かせないといえます。