運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

物流・運送業界で知っておきたい自然災害による貨物の損害や遅延の責任

2019.11.10
分類:リスク

近年、台風や集中豪雨、地震などの自然災害が増えてきたように感じる方もいることでしょう。物流・運送業界においても、このような自然災害により、商品や貨物が損傷・滅失し、供給ラインが止まってしまうといった様々な影響が及びます。

もしこのような自然災害により、商品や貨物に損害が及び遅延が発生することもありますが、このような場合でも損害賠償責任を問われることになるのでしょうか。

自然災害による貨物や商品の損傷は責任を負う必要があるのか

台風や集中豪雨、地震などの自然災害で商品や貨物などが損傷・滅失してしまうのは、一般的に不可抗力であると考えられます。そのため、運送や保管を依頼された運送会社や港湾業者、倉庫業者などはその責任を負う必要はないと判断されます。

ただ、運送業者や港湾業者、倉庫業者などに過失が認められるときには責任を負わなければならない可能性もありますが、実際のところ自然災害における過失の有無が立証されることは難しいといえるでしょう。

港湾業者や倉庫業者の場合

もし台風などで高潮が発生し、貨物が損傷した場合、港湾業者や倉庫業者は責任を負うのでしょうか。

一般的に港湾運送約款や倉庫寄託約款では、通常の過失は免責、故意・重過失の場合のみ責任を負うとしていることが多いです。

そのため、仮に港湾業者や倉庫業者に通常の過失があったとしても、これらの業者は損害賠償責任を負わないと考えられます。

陸上運送や海上運送の場合

陸上運送や海上運送は注意が必要で、運送会社に過失が認められるときには損害賠償責任を負う可能性が高いです。

商法では陸上運送の過失を免責することが認められてはいるものの、標準約款では通常の過失でも責任を負うとしています。

さらに商法では、国内の海上運送の通常の過失は免責することを認めていませんが、海上輸送中の船員などの過失は免責することを認めています。

 

コンプライアンス上危険な行為は行わないこと

基本的には自然災害で貨物などが損傷・滅失したとしても、運送会社や港湾業者、倉庫業者が損害賠償責任を負うことは少なく、たとえ負うことになっても貨物の価額が限度という場合が多いようです。

ただ、法的な根拠もないのに違約金や損害分を含む巨額の填補に応じなければ、今後の取引は停止するといったケースも存在します。

このような要求はコンプライアンス上、非常に危険な行為と考えられますが、自社が要求されるのではなく、反対に自社の現場担当者がこのようなリスクの高い行為を行う可能性もありますので注意しておきましょう。

 

取引先と円滑な関係を続けるために

自然災害が発生した時には、運送会社は運送が不能な状態に陥り、遅延も発生させることになります。しかし責任を負うことは必要ないと判断されますが、取引先とのトラブルを発生させないためにも、契約条件で自然災害が発生したときを想定した条件の見直しなども必要になるのかもしれません。