運送業は、受注した仕事を外注などに委託することで、元請けと下請けが存在します。
下請けから孫請け、孫請けからひ孫請けへと次々に仕事を委託することを重層下請構造といいますが、荷主から一次請けをした会社の下に多くの下請け会社が連なることになります。
しかしピラミッド構造の最も上にいる貨物利用運送事業の会社から、次の下請け業者、そしてさらに別の業者へと二次・三次・四次へと多重に発注されることには、多くの問題を発生させます。
そこで、運送業で問題視される重層下請構造について、どのような問題があるのか解説してきます。
「下請け」とは、発注者が請け負った仕事を、別の業者などが引き受けることです。
部品の製造委託や自社で請け負った仕事を外部へ委託する取引であり、この下請けが発生する取引を公正に行うための法律が「下請法」であり、委託側の親事業者に義務や禁止行為を定めています。
運送業における下請けとは、荷物の運送を元請け企業が依頼され、その荷役を別の業者に委託するケースを下請けといいます。
運送業で問題となっているのは、下請けが別の業者へ委託する二次・三次・四次などの多重な重層下請構造です。
運送会社に輸送を割り振り、仕事を引き受けた会社がさらに下請けとなる会社へ仕事を依頼します。
道路で目にするトラックの多くが、三次請けや四次請けであるケースもめずらしいことではありません。
運送業の重層下請構造は、以下の問題を抱えているといえます。
・収入格差が発生する
・下請けの労働時間が長くなる
・下請けの倒産リスクが上がる
・構造的な問題が発生する
それぞれ説明します。
下請けに位置するほど収入格差も生まれやすく、一階層の末端の下請け会社ほど途中でマージンなどを差し引かれるため、受け取るお金も少なくなります。
下請けの運送業では、荷物の積み込みや荷降ろしなどの作業を開始できる状態であるのにもかかわらず、準備ができていないため荷待ち時間が発生します。
企業によって、この荷待ち時間を休憩時間として捉えるケースも少なくありません。
下請けの業績が悪化し、倒産すれば次の下請けに位置する孫請け会社の資金繰りも悪化します。
元請けが倒産すれば下請けが連鎖倒産し、さらにその次の下請けも倒産するなど、次々に会社がつぶれてしまう恐れもあります。
重層下請構造は、トラブルが発生したときに責任の所在が明確にしにくく、下請けが責任を押しつけられてしまう恐れが高くなります。
また、元請けや一次請けは優位な立場となり、二次請け以降は立場が弱くなるなど、上下関係を作りがちです。