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道路貨物運送業の危機とは?リーマンショック時代と同様の倒産件数増加の問題

2025.10.10
分類:その他

帝国データバンクは、2025310日に、道路貨物運送業の倒産発生状況について、調査・分析を行いました。

 公表されている結果を確認すると、道路貨物運送業の倒産件数は、リーマンショック時に迫る勢いであることが確認できます。

 そこで、道路貨物運送業の危機について、リーマンショック時代と同様の倒産件数増加の問題を紹介します。

リーマンショック時に迫る倒産件数

 帝国データバンクの道路貨物運送業の倒産発生状況に関する調査・分析の結果によると、顕在化した「2024年問題」で、自動車運転従事者の有効求人倍率が全業種平均を2倍近くまで上回るなど、人手不足が顕著になっているようです。

 燃料費の高騰もあり、収益と資金繰りのどちらも厳しい環境が続いています。

 道路貨物運送業の倒産件数は、2024年度でリーマンショック(2008年度)に迫る過去2番目の高水準のようです。

  

倒産件数増加の背景

 道路貨物運送業の倒産件数が増えた背景には、燃料費の高騰と人手不足の深刻化が関係しています。

 まず、2024年度の人手不足倒産は、道路貨物運送業者が全体の12.3%を占ていました。

 同じく2024年度の物価高倒産は、道路貨物運送業者が全体の13.8%を占め、その9割が燃料価格上昇を原因としています。

 そのため、人手不足と燃料費などの物価高が同時に襲いかかり、経営状況を悪化させたと考えられるでしょう。

 2025116日からは、ガソリン補助金が縮小されてしまい、今後もさらに厳しい環境が続くと予想されます。

  

 抜本的な対策が重要

 リーマンショックのとき、そして現在、どちらも軽油価格高騰で費用負担が増し、収益悪化が深刻化しています。

 当時は急速な景気減速を背景に、荷動きの停滞などで受注難が発生していました。

 現在は、アフターコロナの消費回復などにより、運送・物流ニーズは高水準といえるものの、現場の人手が足りずに受注が確保しにくい状況となっています。

 今後、日本は人口減少により労働人口も減り、既存のドライバーは高齢化が進み、さらに人手不足が深刻化するでしょう。

 他業界との人材確保に関する競争も激化すると予想されますが、低賃金で過酷な労働のイメージが強く、若い世代が敬遠しがちな業界のため、採用活動を見直す必要があります。

 課題解消に向けて、賃金や福利厚生を改善することも必要ですが、さらなるコストアップとなれば経営を圧迫しかねません。

 今後も道路貨物運送業の倒産は高水準の推移となる恐れがあるため、荷主の理解を得た上での運賃引き上げや、委託構造の見直しによる価格転嫁率上昇などの対策が急務といえるでしょう。