自動車産業の業界構造を見たとき、頂点が完成車メーカーであればサプライヤーは段階的に連なるといった系列化が基本となっています。
部品は3万点にも及ぶとされており、それらを加工・組み立てていき自動車は完成します。
単純に模式化したときにはピラミッド構造になるわけですが、物流において実際のサプライチェーン構造はさらに複雑になっています。
自動車産業の物流の全体概要を示す頂点に位置するのが完成車を扱うトヨタやホンダなどのOEMだとすれば、その下にはボディやシャーシなどの部品を扱う企業、さらにその下は半導体部品の企業が位置し、中小メーカーが主体となるネジなどの部品を扱う企業は最も下位層に位置することとなります。
しかしサプライチェーンの構造はさらに複雑となっており、さらに上流や下流に物流が発生することとなります。たとえば上流は鉄や化学など素材、その素材を加工し部品をつくる材料、部品として加工・組み立てられた最終製品までの加工段階でも金型や金属プレス、鍛造、鋳造など加工を行うメーカーが関与することもあります。
部品メーカーも完成車の生産メーカーOEMに近いサプライヤーから、Tier1、Tier 2と段階的にサプライチェーンが組まれます。しかし実際には1社がTier 1とTier2の役割を行うこともあるので一概に言えません。
系列内の取引が多い傾向ですが、グローバル化が進み国内の生産量が低下しているなどを理由として、系列外のメーカーに対する供給も増えていると考えられます。
完成車はキャリアカーという輸送車両でディーラーなどに搬送されることとなりますが、自動の使用期間中に行うメンテナンスに向けて部品やアクセサリーなどもディーラーや自動車専門小売業などに輸送されます。ただしカー用品小売についての物流は、外部委託で対応するなど、必ずトラック手配を自社で行っているとは限らないようです。
日本の自動車産業はコスト削減を目的として在庫をもたない生産方式が採用されています。部品メーカーは必要なときに必要な量を完成車メーカーにおさめることとなりますが、OEMからTier 1に対する発注まで2~3日程のリードタイムが発生します。
部品が届かなければ完成車の生産ラインは停止するため、サプライヤーは完成車メーカーの生産スケジュールに合わせ部品を届けることが求められるといえるでしょう。
サプライチェーンの上流になるほど下流からのリクエストに即応しなければならず、貨物輸送・在庫もある程度余裕を持たせておかなければならないということになります。