個人で運送業を営んでいる方が、新たに法人化するときには、役員報酬を設定することが必要です。
個人事業主であれば、自由に儲けから生活費として使用していたでしょうが、法人化すれば会社と個人は別人格となるため、役員報酬という給料制でお金を受け取らなければなりません。
そこで、運送業を始めるときには個人事業主のほうがよいのか、それも最初から会社を設立したほうがよいのか、法人化するなら役員報酬を決めるときに何に注意すればよいのかなどご説明します。
個人事業主で運送業を営んでいれば、受け取ったお金で生活費を賄うこともできたでしょう。
しかし法人化した場合には、役員報酬としてお金を受け取り、生活費を賄うことになります。
そして個人事業主であれば生活費にいくら使っても経費にはなりませんでしたが、法人化した後の役員報酬は経費という扱いです。
それなら節税効果を狙い、できるだけ多く役員報酬を設定したいと考えるものでしょう。
しかし役員報酬の決め方には制限があり、たとえば期首から3か月以内の1年に1回で決め、それをその年度は継続することが必要です。
1年に1回だけは金額を変更できますが、多く働いた分、年度の途中に勝手に増やすといったことはできません。
役員報酬を決める目安として、
・生活費はいくら必要になるか
・節税につながる金額
などを確認しましょう。
中小企業の法人税率は、利益額により違ってきます。
たとえば役員報酬を月80万円で設定したとき、個人の税率は「社会保険料+所得税+住民税」で27%となります。
利益800万円を超えると法人税率は33%ですが、法人税率よりも低い税率になる可能性もあるということです。
利益が800万円超発生しているのに、役員報酬は月40万円で設定していると、高い税率で法人税を納めなければならないということです。
中小企業の場合、会社と経営者のどちらかにお金を残すことができる節税対策が必要となるといえるでしょう。
役員報酬には社会保険料がかかるため、会社は社会保険料を半分負担します。
さらに手取りを多く確保するには、額面を上げることが必要となるため、それにより赤字になれば意味がありません。
無理に法人からスタートするのではなく、まず個人事業主として運送業をはじめ、シミュレーションをしながら最適なタイミングで法人化したほうがよいでしょう。