新型コロナウイルス感染拡大により、外出自粛やリモートワークが推奨されるようになったことで、宅配便利用など物流の重要性が再認識されることになりました。
ECサイト利用者が増加したことで運送・宅配業界もまさにバブルといった状況となったといえますが、1991年から1993年までの景気後退期であるバブル崩壊の苦境を忘れてはいけないと考えられます。
そこで、バブル崩壊時期といわれた当時、運送・物流業界にはどのような影響があったのか再確認しておきましょう。
1991年には、1975年以来長年に渡り上昇し続けてきた地価が少しずつ下がり始め、ゴルフ会員権や高級絵画などの資産価値も下落していきました。
バブル経済が崩壊したことで、1993年前後にはついに、「失われた20年」と呼ばれる不景気の長いトンネルに入ることになります。
物流業界でも1991年から景気減速し、1992年、1993年と国内貨物輸送量は下がり続けていきました。そして製造業や流通企業など荷主が物流コスト削減に乗り出したことや、規制緩和による競争激化で運賃は下落していきます。
これらの流れにより、中小の運送事業者の中でもトラック台数が10台未満という規模の小さな会社は、従業員に対する給料の支払いさえ厳しい状況に置かれてしまったといえます。
1997年には消費税も増税され、個人消費は冷え込みを見せる一方という状況であり、手元の資金不足で銀行を頼っても貸し渋りなどで倒産する中小企業が続出しました。
失業者の増加で不安を感じた消費者は、さらに財布の紐を固く締めるようになり、増々モノは売れず負のスパイラルに陥ったといえます。
あおりを受けたのは中小だけでなく大企業も同じで、大企業の倒産も相次いで発生しました。
2000年前後になると、トラック運送業界の輸送量は増えてきたといえますが、規制緩和後の競争激化と原油価格高騰に環境規制対応などで増々厳しい状況が続きます。
2006年には、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」が施行されたことで、貨物輸送量が一定規模を超える企業は特定荷主の指定を受け、輸送に係るエネルギー使用合理化の計画書や定期報告書を提出することが義務づけられるようになりました。
そのため、トラックなど自動車を使った貨物輸送を、環境への負荷を抑えられる鉄道や船舶へとシフトする「モーダルシフト」の推進されるようになったといえます。
他にも「ジャスト・イン・タイム」など、少量多頻度輸送の必要性が高まったことで、無駄な在庫をもたないサプライチェーンマネジメントが進められるようになりました。
新型コロナウイルス感染拡大により運送・物流ニーズが高まっているバブルのような状況といえますが、コロナが収束した後にどのような動きになるのか注意しておくことも必要です。