運送・物流業界では、製造現場で使用される「ライン方式」と「セル方式」という作業スタイルが使われています。
昔ながらの作業スタイルが「ライン方式」で、ベルトコンベアに乗せられたものを横並びになった作業員が担当する形式です。
それに対し「セル方式」は、屋台をコの字型に構えて自己完結できるような作業スタイルとなり、1人または少人数がユニットになって、組み立てから完成まで担当します。
少量多品種化され生産量が変わってきたことで、製造業では従来のライン方式からセル方式に移行する現場が少なくないようですが、物流現場でも製造業の変化に合わせセル方式を採用する現場が増えているものの、物流会社の運営する物流現場はまだライン方式の採用が多いようです。
ライン方式とセル方式は、取扱う商材・注文単位・在庫の有無・出荷スタイルなどでどちらがよいか変わります。
ただ今後は、多くの物流現場ではライン方式からセル方式へと、少しずつ移行していくと考えられるでしょう。他にもライン方式の一部にセル方式の要素を組み込むといった方法も取り入れられているようです。
ただ、ライン方式は、一連の作業を多数の作業者の手を介し完結させるため、作業者の士気を低下させてしまうといったデメリットがあります。
1つの作業を複数の担当者が受け持つことが多くなり、作業量が多い人とそうでない人の差が出にくく、さらに個人の力で作業精度や品質を高めることが難しいからです。
管理者が頑張って仕事をしている人とそうでない人を把握しにくいと、現場には倦怠感が残ることとなり、まじめに作業している方や作業能力の高い方の士気を低下させます。
それならライン方式ではなくセル方式のほうがよいと考える方もいるでしょうが、セル方式では作業者が複数の高いレベルの技術を保有していることが求められます。そのため教育コストがかかるという部分が大きなデメリットとなるでしょう。
現在では多くの製造現場でセル生産方式が導入されていますが、その一方でICT・IoT・AIが現場に普及し始めたことで、より効率的にモノづくりを可能とする生産方式が世界中で注目されるようになっています。
たとえば無駄なく効率的に、さらにタイムリーに製品を供給する製造スキームであるスマートファクトリーなどがその例で、ダイナミックセル方式と呼ばれ、従来のライン生産とセル生産のメリットを融合させた方式といえるでしょう。
今後はダイナミックセル方式を導入する現場が増えると考えられますが、物流現場も同様にこの方式を採用するケースが出てくると考えられます。