交通事故を起こしても人身事故ではない軽微な物損事故であれば、事故に入らないと思っているドライバーも少なくありません。実際に車同士での物損事故の場合、警察を呼んでも事故証明書の発行を伝えられ、当事者同士で相談するようにという対応のこともありドライバーも軽視しがちです。
私有地など道路以外の場所で事故が起きた場合は交通事故に含まれませんので、工場構内などでトラックが建屋に衝突し破損したという場合については警察へ事故の報告義務はありません。しかし道路で事故を起こした場合には、例え物損事故(車両単独事故を含む)だったとしても事故報告を警察に行う必要があります。
警察に交通事故報告を怠った場合、道路交通法に違反したことを問われる可能性もありますが、同時に社内で報告を怠るようになってしまい事故隠しが普通に行われる状況になります。そのため会社では、ドライバーが物損事故を軽く考えないように、事故が発生した場合には会社と警察に報告することを徹底する必要があります。
追突事故により、相手の車のバンパーがへこんでしまったという程度で相手もケガなどがないことから物損事故と思い込むケースもあります。しかし後になってムチ打ち症状が出てきたと相手がうったえ、物損事故が人身事故になったというケースも少なくありません。
事故について警察に届け出ていたのであれば、実況見分調書の作成はされていなくても事故調書があるはずなので診断書などから人身事故に切替えて申請することが可能です。一方事故報告を怠っていた場合には、警察に事故報告を行っていなかったと同時に保険会社も免責を主張してくるためトラブルのもとになります。
事故報告を怠る背景には、交通事故として報告した場合には無事故表彰から事業所が外されてしまうというケースや、事故防止委員会との兼ね合いが面倒だというケース、さらには指導担当者の人事考課に影響してしまうという心理的な面が影響していることが考えられます。電柱やガードレールにぶつけてしまった場合には、隠しやすいという面があるため停車中に当て逃げされたというウソの言い訳も成り立ってしまう状況です。
物損事故があった時に報告することを社内で徹底していくには、再度次の点を見直していく必要があります。
・物損事故でも法的な報告義務があることの指導を行う
・事故隠しを行う企業は取引先や顧客、社会から信頼を失うことの理解を高める
・物損事故を軽視すると人身事故につながる可能性があることへの意識を高める
・車両の点検、清掃などの際に管理者が立ち会い物損事故の有無を調べる
・無事故表彰の基準を柔軟にし、迅速な報告と再発防止策を評価するようにする
事故が起きた時には小さな事故でも必ず報告することを怠らないように、社内で徹底しておくことが大切です。報告をしない理由は心理的な部分によるものですので、報告することがデメリットにならないような工夫を社内で行うようにしましょう。