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【運送】従業員が会社に対して損害賠償責任を負うケースとは?

2017.02.01
分類:その他

会社が雇用している従業員に対して損害賠償請求を行うケースとは、従業員が契約の不履行や故意・過失によって他人に対して損害を生じさせた場合です。
従業員が職務を遂行するにあたって、必要となる注意を怠り労働契約上の義務に違反してしまった場合、債務不履行に基づく損害賠償責任を負うことになると考えることが一般的です。


従業員に対する損害賠償責任は制約されている
しかし従業員という立場から考えると、使用者と比べて経済力に乏しく賠償責任を負うことは過酷な事態を生じさせることになるでしょう。
また、運送業という事業を営む上で生じるリスクによって利益を得ている部分もあるため、使用者が責任を負うべきであるという危険責任や報償責任についても考えていく必要があるでしょう。
そのため裁判所では民法1条2項などを理由に、従業員に対しての損害賠償請求には制約を加えています。


全てのケースで賠償額が制限されるわけではない
これまでの裁判例によると、従業員に義務違反が認められた場合であっても損害賠償責任が認められるのは故意や重大な過失がある時です。賠償責任が生じたとしても、一般的には賠償額は制限されています。
ただし従業員が横領したという場合、競業避止義務に違反した場合など、故意に違法行為を起こした場合には責任制限は認められません。


損害賠償の予約は禁止
従業員と労働契約を締結する際に、損害賠償責任に違約金を定め損害賠償の予約を行うことは労基法16条で禁止されています。
使用者は従業員と労働契約の不履行について違約金を定めること、または損害賠償額を予定することをしてはいけません。


損害賠償請求自体は可能
予め損害賠償の予約を禁止しているだけで、損害賠償請求自体を制限しているわけではありません。
使用者は民法の規定で従業員が債務を履行していない場合、債務不履行による損害賠償請求、もしくは故意や過失で損害を与えた不法行為による損害賠償請求を起こすことは可能です。
先に述べたように悪質性の高い会社のお金の横領や競業避止義務違反などについては、従業員はその全額に対する損害賠償責任を負うことが原則になります。


生じた損害のままで請求はできない可能性が高い
事業を行うことは常に損害が発生するリスクを伴っていますので、従業員が指揮命令に従い業務遂行している状況であれば、その過程で起きた損害を一方的に従業員が弁償することは公平性を欠くことになります。
さらに会社は指導者や監督者の教育や配置で、想定できる損害リスクを最小限に抑えることや保険を活用してリスクを移転することが可能と考えられます。
経済的な問題もあるため、従業員に損害賠償請求を行うことになっても、通常は生じた損害の1~5割程度に責任を制限することになるでしょう。
どの程度減額されるかの判は特に基準があるわけではなく、従業員の行為の態様、労働条件、使用者の損失に対する予防や分散についての対応など、色々な事情が考慮されて判断されます。