運送物流業情報ラボTransportation Logistics Information Lab

荷物の紛失が起きた場合の運送人が負う賠償責任の有無は?

2017.02.08
分類:その他

配送途中で品物が紛失してしまった場合、宅配業者の負うべき賠償責任はどうなるのでしょう。
商法で「運送人」に該当する人が宅配業者です。その宅配業者に荷物の配送を依頼した人は「荷送人」、配送先の人は「荷受人」です。


運送品に対する損害賠償責任は?
運送品が滅失毀損した場合、商法では運送人(宅配業者)が運送する品物を受取る際、引き渡しや保管の際、そして運送の際に注意を怠っていないことが証明できなければ損害賠償責任を負うことが明記されています。
一般的な民法の債務不履行責任と同様の解釈で、重い責任が特別に課せられるというものでもありません。注意を怠ったことによる滅失毀損であればその賠償責任を負うことは当然だと考えています。


高価品も損害賠償責任の対象?
商法で、運送人(宅配業者)には高価品について特則が設けられています。貨幣、有価証券、他高価品について、荷送人(配送を依頼した人)が運送を委託する時に商品の種類や価額を明告していなければ運送人(宅配業者)は損害賠償責任を負わないことが規定されています。
商法での規律は任意規定のため、運送契約で別途約定を交わしておくことでそちらを優先させることができます。


運送契約の約款への定めは需要?
では宅配業者がリスクを縮小化するために、運送契約の約款にはどのような定めが必要でしょう。
故意過失を問わずに責任免除という制限は現実的ではありませんので、一般的には賠償責任を負うことになったとしても責任制限として限度額を定めることになるでしょう。
一般的な宅配業者では、荷物の滅失による損害について、送り状記載の責任限度額範囲内で荷物価格を賠償することを定めています。ただし宅配業者に故意や重過失がある場合には適用されません。


運送契約上での第三者への責任は?
約款は契約責任を規律するものであり、運送人と荷送人の間で不法行為の要件が満たされれば不法行為に基づいての損害賠償請求も可能になります。
では運送人と荷送人などのように、契約当事者ではない人に対する不法行為が成立してしまうケースでの約款の効力はどうでしょう。
物品運送は配送依頼した荷送人、そして依頼を受ける運送人が契約当事者ですが、それ以外にも配送先である荷受人、物品所有者など、損害を被る人が荷送人以外である可能性もあります。
しかし約款上で拘束されるのは契約当事者だけですので、契約当事者以外の第三者には効力が及ぶことはありません。そのため第三者が不法行為に基づいて被った損害についての賠償請求をしてきたとしても約款は力を発揮しないということも理解しておきましょう。


運送業を営む上で発生する賠償責任を理解しておくこと
運送業務を行う上で、損害賠償請求されるケースは様々ですが、その相手が契約上の当事者なのか、そうでないかによって約款の効力が発揮できるか異なります。
どのようなケースで賠償責任が発生するのかを事前に理解しておき、それに対する備えをしておくことが必要です。