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運送業は残業代未払いが発生しやすい?荷待ち時間も労働になる?

2021.10.19
分類:その他
トラック運送業は残業が発生しやすい職種といえますが、その残業代が未払いになっていることもめずらしくありません。 この未払いの残業代が人材不足の要因になっているとも考えられるため、なぜ残業代の未払いが発生してしまいやすいのか把握しておきましょう。

運送業における労働時間や給与に関する制度への誤解

運送業で未払いの残業代が発生しやすいのは、本来であれば残業として扱わなければならない労働時間が、残業と認識されていないことが関係しています。 たとえば次のような認識の誤解が原因で未払いの残業代が発生していることがあるため、確認しておきましょう。

歩合制に対する認識の誤解

「歩合制」を採用している運送会社も少なくありませんが、従業員との間に雇用契約が締結されているときには、完全歩合制といえるフルコミッションは労働基準法の違反となります。 労働基準法第27条では、労働者に対し労働時間に応じた一定額の賃金の保障が必要とされているため、完全歩合制による雇用契約は認められないと認識しておきましょう。

固定残業代(みなし残業)に対する誤解

残業したかどうかは関係なく、一定時間の残業代を固定により支給する固定残業代を採用している運送会社も少なくありません。 しかし固定残業代を支払っている場合でも、想定する残業時間を超えて働かせることはできず、超えた時間分は別途、残業代の支払いが必要です。

労働時間に関する認識の誤解

ドライバーが取引先で待機する時間や荷物を積み下ろす時間などは、労働時間として評価しない運送会社もあり、中には待機時間を休憩時間として扱うケースも残っています。 しかしこれらのすべて労働時間となるため、規定の時間を超えた労働は残業となり、未払いが発生している可能性があります。

そもそも残業とはどのような時間のことか

一般的な残業とは、 ・所定労働時間を超えて働いた時間…会社が定めた所定労働時間を超過して働いた時間分 ・法定労働時間を超えて働いた時間…労働基準法による労働時間の上限(1日8時間・1週間40時間)を超過して働いた時間分 のことです。 法定労働時間を超えて働いてもらうためには、労使間で36協定を締結し労働基準監督署に届出ることが必要です。 ただし36協定を結んでおけば無限に働いてもらえるわけではなく、原則、月45時間・年360時間の上限を守ることが必要となります。 臨時で特別な事情が発生し、さらに長時間働いてもらう必要ができたため、労使間で合意が成立したときでも上限があります。 この場合、年720時間・休日労働との合計が複数月平均で80時間以内・月100時間未満となり、時間外労働が月45時間を超えてよいのは年6か月までといった制限を守らなければなりませんので注意してください。