医療保険や予防接種の費用は、医療控除の対象となる?
はじめに
医療費控除は、年末調整や確定申告で申請することで課税額を安くできる制度です。
また、2017年からは確定申告での控除申請で「セルフメディケーション税制」という新しい種類の控除を選べるようになりました。
通常の控除制度と新しい控除制度には、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。
また毎年流行するインフルエンザなどの感染症の予防接種は控除対象とならないのでしょうか。
今回は医療費控除の概要についてまとめます。
医療費控除の対象
病気やケガの治療にかかった費用は、年末調整や確定申告で申請する医療費控除の対象となります。大きなケガや病気だけではなく、風邪で病院を受診して薬を処方してもらったときや、歯医者で歯の治療を受けたときに生じた費用、病気やケガの治療目的で鍼、灸、あんま、マッサージなどの施術を受けた際の費用も含まれます。
医師の判断により行われた精密検査なども控除の対象となります。
ちなみに、医療保険の費用は、医療費控除ではなく「保険料控除」という制度の対象となります。
逆に控除の対象とならないものとしては、特に体に異常がない場合の人間ドックの費用、疲労回復のために受けたマッサージ、美容整形、任意の予防接種などが挙げられます。
健康の増進、疲労回復、美容のためにかかった医療費は控除の対象とならないと考えると良いでしょう。
とはいっても、美容整形や疲労回復のためのマッサージはともかく、予防接種に関しては疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
感染症には、重篤化すると後遺症が残る恐れがあるものや、妊娠中にかかってしまうと胎児に影響があるものも多く、予防しておきたいところです。
BCGやMR混合ワクチンなど、子供が必ず受ける「定期予防接種」に含まれているものであれば公的医療保険でまかなえますが、定期予防接種以外の予防接種を家族全員が受けると出費が大きくなってしまいます。
有名な感染症としては、インフルエンザ、ロタ、風疹、おたふく風邪などがありますが、これらの予防接種の費用も残念ながら控除の対象とはなりません。
ただし、医療費控除の方法で「セルフメディケーション税制」を選択する場合には、予防接種の明細が役に立ちます。
セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制は、2017年から利用できるようになった医療費控除の方法で、普段からうまく健康管理を行っている人向けの医療費控除と言われています。
市区町村、会社などで行われる健康診断や予防接種を積極的に活用している人を対象としており、申請者本人と、配偶者、親族の医薬品(条件あり)の購入費用などが控除対象となります。
控除の条件は、「スイッチOTC医薬品」という種類の医薬品を1月1日から12月31日までの間に12,000円以上購入することです。また、控除の上限は88,000円となっています。
セルフメディケーション税制の特徴は、通常の医療費控除と比較して控除額の下限が下がったことです。
通常の医療費控除は、1年間の医療費が10万円を超えないと適用されないのですが、セルフメディケーション税制では12,000円を超えると適用となります。そのため、これまで大きな病気にかかったことがない人や、風邪を引いても市販の薬で治る人に向いている制度と言えるでしょう。
なお、セルフメディケーション税制においても、インフルエンザなどの予防接種の費用は控除対象に含まれませんが、確定申告でこの方法を選択する場合に、健康を維持するための一定の取り組みを行った証明として、予防接種の明細を活用することができます。