病気に対する疾患や高い医療費の支払いリスクに対応するために、公的医療保険や民間の医療保険があります。保険用語として使われている「保険の逆選択」という言葉がありますが、介護保険現場でも保険の逆選択がおこっています。これについて詳しくみてみましょう。
一般的に危険度の高い人、健康に不安のある人や危険な職業の人など身の回りのリスクが高い人ほど自身に有利な保険に加入しようとします。このように、保険会社が自己に有利な保険に加入させようとすると事故発生確率の低い保険を選択する傾向にあるのに対し、被保険者はその逆の保険を選択しようとするためこのように呼ばれるようになりました。
保険の逆選択が行われた場合、保険料率の水準に見合ない高いリスクを持った人が混入し、収支均等の原則が崩れます。また、最終的には加入している大多数の被保険者に不利益をもたらす可能性もでてきます。
このように保険の逆選択とは保険の業界用語で、保険会社が加入者について把握づらい状態で保険料を設定すると結果的にリスクの高い人ばかりが残ってしまうことを言います。
公的介護保険の費用は、公費から半分が負担され、残りは65歳以上の第1号被保険者、40~64歳の第2号被保険者の保険料負担から成り立っています。
2号被保険者のうち、被用者保険加入者の負担額は現在「加入者割」という仕組みになっておりどの医療保険でも一人当たりの負担額は同じです。
保険料は所得に応じて異なりますが、加入者割を適用しているため同じ年収の人であっても加入者数の多い保険に加入している人は保険料が少なく、加入者数が少ない保険では保険料負担が多くなります。このように加入者数によって保険料が変わってしまうという不公平さが生じてしまいます。
保険のこのような不公平さを回避するために、社会保険方式により効率的で公平な費用負担が可能になります。
社会保険方式により、保険料の使途が介護保険に限定され保険料の負担と給付の関係が明白になります。また介護費用を将来にわたって安定的に確保することも可能になるのです。
そして介護保険では、受けたサービスと自分が負担する金額が応益になるため利用者の負担の不公平が是正されます。
このように民間の介護保険でも、公的介護保険においても保険の逆選択は起こっています。今後加速する高齢化社会に向けて、どのように被保険者の保険料の不公平さを是正していくかが大きな問題となっています。