2018年度の介護保険制度の改革に向け、社会保障制度審議会、介護保険部会で様々な議論が繰り返されています。具体的には、利用者の2割負担の対象拡大、軽度の要介護者の生活援助サービスの保険はずし、利用者負担の過重化と給付の縮小が大きな柱となっています。
しかしこれらは、結果的に政府が掲げた「看板」政策と「介護離職者ゼロ」と完全に矛盾することになります。
介護保険の矛盾点について、さらに詳しく見てみましょう。
介護保険の本来の目的から見ると、「介護が必要な状態になっても、住み慣れた自宅で高齢者が自立した生活を送ることができるよう総合的な介護サービスを提供する」とあります。
しかし、実際には現行の高齢者介護に関する制度は、福祉サービスと保険医療サービスが別々に提供されており、本人や家族がサービスを自由に選択する事は出来ないようになっています。
また、介護保険には介護サービスを総合的に受けられるようにするという目的がありますが、実際にはケアプランの作成は細切れなサービスをつなぎ合わせたもので、本人負担分という金銭的な縛りもあることから、サービスの不自由さや低下という矛盾が浮かび上がってきます。
上記のような矛盾点以外にも、介護保険の導入が医療保険制度へ及ぼす影響も懸念しておく必要があります。
今後考えられることとして下記のようなことがあります。
・要介護認定基準のような基準が診療報酬の定額支払いにも導入される危険
・高齢者の年金から医療保険料も天引きされるかもしれない
・介護保険では、保険給付と自己負担の併用がされているため、医療保険でも定額制になるかもしれない
今後も加速していくであろう、我が国の高齢化社会問題に向けて利用総額は増大していくことは間違いなく、保険料の負担増や、サービスの上限枠の設定などが更に厳しくなっていくことが懸念されます。
近年核家族の増加、単身世帯の増加に伴い、高齢者の孤独死は大きな社会問題となっています。このような背景を受け、介護保障の充実は我が国の喫緊の課題となっており、誰もが安心して老後の生活を送ることが出来る社会であるように、介護保険制度の様々な矛盾点は一つずつ改善していくことが求められます。介護保険、介護保障政策の重視、給付拡充は介護分野への所得移転となり、これからの日本の経済政策、成長戦略の一つとしてあることを忘れないようにしましょう。