就業不能状態で利用できる社会制度と保険
【はじめに】
働き始めて定年退職を迎えるまでの期間は30~40年。
この長い期間で、いろいろなことが起きます。
結婚して家庭を持つかもしれませんし、親の介護をするかもしれません。また、あまり考えたくないことですが、病気や怪我で働けなくなってしまうという事態も考えられます。
そんな時、支えとなってくれる制度にはどんなものがあるのでしょうか。
【就業不能と社会保障】
就業不能状態の時に利用できる社会保障について説明します。
(1)傷病手当金
会社員や公務員で、厚生年金・共済年金と健康保険に加入している場合に利用できる制度です。
病気や怪我で働けなくなった場合、1年6ヶ月間、傷病手当金として給料の3分の2の金額を毎月受け取ることができます。
ただし、1年6カ月という期間には注意が必要です。(後述)
(2)障害年金
1年6カ月以上働けない場合は、病気の症状が重いと考えられます。
所定の条件に当てはまると、障害年金も利用することができます。
国民年金に加入している場合は障害基礎年金、厚生年金に加入している場合は障害厚生年金を受け取ることになります。
受け取れる年金の額は、障害の度合い、年金の加入期間、収入、子供の有無などによって変わってきます。
(3)生活保護
厚生年金に加入していない場合、基礎年金1級の場合でも受給できる額は月に8万円前後なので、障害年金だけでは生活していけません。
当面の間働ける見通しが立たない場合は、生活保護を申請するというのも一つの方法です。
(4)会社の福利厚生
企業によっては、福利厚生で傷病手当金の受給期間が長く設定されており、より手厚い保障がうけられます。
【就業不能保険とは】
ここまで、就業不能状態に陥ったときに利用できる社会保障制度についてみてきました。
手続きなどが大変ですが、最低限の生活は保障されています。
しかし、家庭を持っている場合や、高齢の親がいる場合、家のローンを払っているなどは、社会保障だけで生活していくのはとても厳しくなってしまいます。
また、上記(1)の傷病手当金は国民健康保険にはないため、法人ではない自営業の方は傷病手当金に代わるお金を自前で用意する必要があります。
そんな時に役立つのが、就業不能保険、収入保障保険、所得補償保険です。
医療保険が「入院・手術にかかるお金」を保障するのに対し、これらの保険では働けない状態に陥った時の生活費を保障します。
(1)就業不能保険
名称の通り、就業不能状態に陥ったときに毎月受給できる保険です。(受給条件は、保険によって異なります)
長期保障を前提としており、退職を迎える60~70歳が満期となっています。
毎月受け取れる金額は、年収、家族構成などによって変わってきます。
(2)所得補償保険
就業不能保険と同じく、病気や怪我で働けなくなった場合の収入を保障します。
しかし、就業不能保険と比べて短期間の保障を前提としており、1~5年で更新を行います。
「就業不能状態に備えたいが、その時の家計の状況に応じて保険の見直しをしたい」という人に向いています。
(3)収入保障保険
収入保障保険はどちらかというと死亡保険に近い内容の保険で、家計を支えている人が死亡または高度障害状態で働けなくなった場合に、家族の収入を保障します。
【最後に】
今回は、就業不能状態の時に利用できる社会保障制度と、公的保険とは別の保険についてまとめました。
近年は、正社員であっても以前と比べて企業の福利厚生に頼ることが難しくなっていますし、フリーランスや自営業などで公的保険の恩恵が少ない方などは、いざというときの備えは自分で蓄える必要があります。
その一つとして、就業不能保険、所得不能保険、収入保障保険の活用を検討されてみてはいかがでしょうか。