危険な作業が多い建設現場では、少しのミスが大事故につながってしまうこともあります。
多額の賠償責任を負うこととなり、事業継続を脅かす問題に発展することもあるため、軽視することができない重大なリスクとしてとらえておくことが必要です。
そこで、建設現場で事故が発生したときに建設事業者が負う賠償責任と、クレーン車の転倒事故を例に想定される損害賠償について説明していきます。
建設工事現場で事故が起きてしまったとき、建設事業者が負う可能性のある責任は主に次の3つです。
・民事責任
・刑事責任
・社会的責任
それぞれ説明していきます。
「民事責任」とは、民法に基づいた損害賠償責任であり、加害者が被害者に対し与えた損害を金銭に償うことになります。
発生した事故で従業員や通行人がケガを負ったときや、近隣の家や車を損壊してしまったときには、民事上の責任を負うこととなり損害賠償する責任が発生します。
「刑事責任」とは、犯罪として刑罰の対象となる刑法上の責任であり、事故発生により被害者が亡くなる死亡事故や重大なケガを負ったり後遺症が残ったり、多数の被害者を出してしまったなどの場合、刑法による業務上過失致死傷罪で刑事責任を問われることがあります。
社会の一員として社会的公正・環境に対する配慮など、経営活動において行わなければならない責任を「社会的責任」といいます。
発生した事故がマスコミにより報道されることやSNSで拡散されることで、社会的な責任を追及されることも少なくありません。
杜撰な安全管理体制による事故発生で信用を失うことになれば、契約解除や資金繰り悪化を招き、事業を続けることが難しくなるとも考えられます。
民事責任の場合、事故の内容によっては1件の事故であるのに複数の被害者から賠償請求される可能性もあります。
たとえばクレーン車の転倒事故が起きてしまった場合、考えられる賠償リスクは次の3つです。
・従業員による賠償請求
・通行人または近隣住民による賠償請求
・クレーン所有者による賠償請求
それぞれ説明していきます。
クレーン車転倒で従業員がケガを負ったり亡くなったりといった事態が発生すると、従業員本人または遺族から損害賠償を請求されることになります。
元請業者の場合、自社の従業員だけではなく下請業者の従業員にも安全配慮義務はあることを理解しておきましょう。
元請業者から仕事を請け負った一人親方も実質的な使用従属関係が認められれば、安全配慮義務は発生します。
クレーン車転倒で付近を通行していた歩行者がケガを負ったときや、隣接の家や駐車場の車などを損壊させたときにも損害賠償責任を負うことになります。
損壊した建物が店舗で、営業できないほど損壊させれば、修理代だけでなく休業補償も請求をされることになるでしょう。
クレーン車をリース契約で調達していた場合、転倒事故で破損させればクレーン所有者から損害賠償請求されることになります。