新型コロナウイルス感染症の影響によって、公共事業の工事が中止となってしまうという事態が起きました。
2020年3月に入ってから、15日までの約2週間について国は公共工事を一時中止、または延期することを認めたからです。
しかし受注者からの措置の申し出があった件数については、施工現場を抱えている工事畑と、測量や設計などを担当する業務畑とでは差が生じることとなりました。
実際、3月上旬に建設コンサルタントなども在宅勤務を実施し、従業員がオフィスに出社することを原則禁止しているという光景も多く目にすることとなりました。
電話をかけても自動アナウンスにより、用件を電子メールで連絡することを促す案内が流れるという形で対応されていたのです。
しかし元請けであるゼネコン側としては、新型コロナの感染者が出たわけでもないのになぜ工事を止めなければならないのかと、現場の感染対策を講じながらの通常稼働を希望していたのは期末が近かったこともあるからでしょう。
結果として、新型コロナウイルス感染症への対応は、建設業界でも建設コンサルタントのような業務側と、ゼネコンや中小建設業者などの工事側で差が鮮明にあらわれることになったのです。
国が直轄する公共工事の一時中止や工期の延長を認める異例の措置により、建設機械のリース料や人件費など増加した分についても国が適切に負担するという形がとられました。
この異例の措置の対象になったのは道路や河川などで、工事は約9千件、工事前段階の調査・設計・測量などの業務は約1万2千件に及んだようです。
その判断は受注者に委ねられていたため、申し出があれば一時的な中止や工期を延長させるという措置が取られるものであり、すべても工事や業務が一律でストップするわけではありませんでした。
受注者の意向確認を進めながら、結局のところ全体の2%程度の工事で申し出があった状況で、業務は10%を一時中止するという形になり、かなりの差が出る結果となりました。
3月は発注者側の年度末予算消化のタイミングでもあったため、本来であれば1年の中で最も仕事が集中する時期です。工事を中断すれば、確保していた下請けの職人が他の工事に流れる可能性が懸念され、工事再開のタイミングで人手不足に陥る恐れがあると考えてしまうのも無理はありません。
特に日当制の職人など、予定していた仕事がなくなれば収入減となり、生活できなくなるため別の仕事に流れていく可能性が高くなります。
下請けの中小建設業者も年度内に完工させる時期がずれ、3月に売上計上できなくなれば経営にも大きな打撃となってしまいます。
テレワークは工事現場で働く職人にとって対応できる方法ではなく、一時中止されても自宅待機では生活できません。
それに対し業務を担当する建設コンサルなどの業務側は、期末の3月は現場作業などを終え、報告書作成といった案件が多いので、ウェブ会議や在宅勤務でも十分対応できます。下請けの奪い合いも起きず、売上時期がずれても問題ないとすれば延長措置を判断しやすい状況にあったといえるでしょう。