建設業界は東京オリンピック需要でまさに好業績だったといえますが、深刻化している人材不足の問題は解消されておらず、さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響で厳しい状況に陥っている業者も少なくありません。
特に建設業界特有といえる重層下請構造は、いろいろな建設業者に様々な影響を与えてしまっているといえますが、なぜ問題になっているのかご説明します。
建設業界では、発注者が仕事を元請けに依頼し、仕事を受注した元請けは下請けへ業務を委託します。
この元請けから下請けへ仕事が受発注される仕組みは、一次、二次程度に収まらず、三次・四次・五次と続くことが建設業界の特徴です。
そのため発注先である元請けの業者が倒産してしまった場合、そのあおりで下請けの業者まで連鎖倒産してしまうこともあります。
コロナ禍では資金繰りに困った建設業者も多く、この取引先の倒産により事業を続けることができなくなった建設会社を増やしました。
重層下請構造の下請け業者は資金繰りが悪化しやすく、元請けの資金繰りのあおりも受けやすいといえますが、不足が生じる前に資金を調達しなければなりません。
工事代金が支払われるのは工事が完成した後であり、すぐに回収できるとも限らないため、それまでに発生する仕入れ代金や人件費、外注費の支払いに充てるお金が必要だからです。
一般的に資金調達する方法として真っ先に思い浮かぶのは銀行からの融資でしょうが、審査が行われ融資が実行されるまで1か月程度かかります。
そもそも銀行の審査は厳しいため、資金繰りに困窮している建設業者に快くお金を貸してくれるとも限りません。
そのような状況でも、工事に使用する資材はすぐに仕入れなければならず、協力会社には外注費など支払うことが必要です。自社の従業員に支払う給料や事務所の家賃に光熱費など、様々な経費負担がより資金繰りを厳しい状態にさせます。
前受金や中間金などが支払ってもらえることはあっても、手元のお金が十分でなければ資金繰りは改善されることなく、苦しい状況が続いてしまいます。
建設業界特有といえる重層下請構造が今後も改善されなければ、代金の回収まで時間がかかり、一定のマージンを差し引かれた少ない金額しか確保できない業者を増やすことになるでしょう。