「有害物質」とは、人や生態系に悪影響のある化学物質のことですが、建設工事現場でも取り扱いに注意しなければなりません。
日本では1970~1990年にかけ、鉄骨建築物の建設の際に耐火被覆材や断熱・防音を目的とした石綿(アスベスト)が大量に使用されました。
石綿(アスベスト)は天然に産する繊維状けい酸塩鉱物で、維が極めて細かいことから、除去の際には所要の措置を行わなければ飛散により吸入するリスクが高くなります。
石綿を吹き付ける作業は昭和50年に原則禁止されていますが、2000年以降は石綿を原因とする肺がん発症といった健康被害が増えています。
このように建築物には有害物質が使われている可能性もあるため、解体や改修工事のときには有害物質の適切な処理が必要であり、義務付けられている事前調査や事前措置を欠かさず行うようにしましょう。
建築物に使用されている可能性のある有害物質として、次の物質が挙げられます。
・従来まで吹き付け作業に使用された「石綿含有吹付け材」
・「保温材」「耐火被覆材」「断熱材」
・廃棄物焼却炉から排出する「ダイオキシン」
・蛍光灯に使用する「水銀」
・冷凍機や空調機に使用する「フロン」
建設業では、添加剤や材料など様々な化学物質が使用されているものを扱います。
一定の危険有害性のある化学物質を取り扱うときには、事業の規模に関係なくリスクアセスメントを実施することが義務化されています。
該当物質には「セメント」「アスファルト」といった身近な材料も含まれるため、必ずリスクアセスメントが伴うと留意しておいてください。
現場作業に潜在している労働災害や、事故発生原因になる危険性・有害性の特定とそのレベルの見積もり評価により、対策を検討する流れを「リスクアセスメント」といいます。
建設事業者はリスクアセスメントの結果に基づいて、リスク低減措置を実施することが努力義務化されています。
リスクアセスメントを実施する時期は以下のとおりです。
・施工計画策定のとき
・建設物の設置・移転・変更・解体のとき
・新規で設備を採用・変更するとき
・新規で原材料を採用・変更するとき
・新規の作業方法・作業手順を採用・変更するとき
また、リスクアセスメントに必要な情報として、
・作業標準・作業手順書
・機械設備・材料の危険性・有害性に関する情報
・作業の周辺環境に関する情報
・複数の事業者が同じ場所で作業を行う状況に関する情報
・災害事例・災害統計・ヒヤリハットなど
が挙げられます。