建設業界でリスクマネージメントを検討する場合には、まずは行ってみる姿勢で取り組むことが必要です。
企業全体で一斉に展開していくことが望ましいといえますが、まずは特定の現場や作業グループで行い、結果に基づき事業全体に広げることも可能です。
そこで、建設工事を行う建設業者のリスクマネージメント・リスクアセスメントについてご説明します。
リスクマネージメントとは、リスクを組織的に管理し、損失などを回避・低減させるためのプロセスを指しています。
主にリスクの特定・分析・評価といったリスクアセスメントとリスク対応で成り立ち、危険による不測の損害を、最小限の費用で効果的に処理できるようにする経営管理方法のことです。
建設業者がリスクマネージメントを行う上で、まず危険性と有害性を特定するリスクアセスメントをはじめましょう。
職場の危険性や有害性をどのように特定するかが効果としてあらわれるかを大きく左右しますが、特定の際には次のことを留意しておくことが必要です。
・作業計画や作業手順書を準備する
・作業を区切れる単位で区分する
・作業区分をさらに作業単位に細分し、作業単位には適当な作業名を決める
・危険性や有害性の特定はリスクアセスメントマニュアルなどを活用し、作業単位ごとに書き出す
・日常の作業とは異なる視点から現場を観察し、実際に起きた災害は起きるわけがないと思われる内容が多いことに配意する
・機械や設備は故障することもあり、人はミスを犯すものだと考えた上で、作業現場を観察する
リスクを特定したらその大きさを見積もります。リスクの見積りは様々な観点から検討することが望ましいため、作業内容を把握している職長や作業者が中心となって、現場の安全衛生責任者などから資料提供や助言を受けつつ行いましょう。
リスクの見積もりを行う際には、次のことに留意しておくことが必要です。
・作業の実態や安全対策を考慮する
・災害の事象を考え具体的な負傷・疾病の重篤度を想定する
・発生した災害ではなく、考えられる高さといえる重篤度で想定する
・可能性の評価は危険性や有害性に接触・接近して災害になる度合で想定する
・見積もる値は記録などを分析した資料に基づき説明できるものであること
・見積もる値はメンバーの納得のもとで決定する
・見積もる値がばらついた場合はメンバーの意見を十分調整する
・見積もる値は平均ではなく話し合いで合意したものを採用する
リスクを最小限に抑えるため、法令の規定などを確認しながらリスクが高いものから優先し検討していきます。
リスク低減の検討・実施のための安全衛生対策で優先させる順位は次のとおりです。
①危険作業をなくす・見直すことで計画段階から除去・低減の措置をとる
②機械・設備の防護対策と設備的対策を行う
③教育訓練・作業管理など管理的対策を行う
④保護手袋など個人用保護具を使用する
リスク低減の措置を実施した後は、その結果が適切だったか見直しや改善の必要性などを検討していくことも必要です。