業務中の事故については、事故を起こした当事者が所属する会社が全て責任を負うものだと考えていませんか?実は下請が起こした事故でも元請にも賠償積金が発生します。
建設業法では、下請契約の注文者は元請負人(=元請)、請負人は下請負人(=下請)と定義しています。 例えば元受の下に下請が存在し、さらに次の下請が存在すれば全体の請負体系でみた場合、元請→1次下請→2次下請→3次下請…と続きます。1次下請は元請から見れば下請の立場ですが、2次下請からみると元請の立場です。このように1つの工事に複数の元請や下請が発生するケースも多く存在します。
従業員を雇用する立場である会社は、職場や従業員の安全や健康について配慮するという義務があります。これは労働安全衛生法で規定されており、業種によって区別されるものでもありません。また、従業員は正社員に限られるわけではなく、パート・アルバイト・派遣などの勤務形態の場合でも該当します。そして下請けに仕事を渡せば下請会社の従業員に対して安全配慮を行う義務も発生します。
先に述べた元請と下請の関係で見てみると、例えば3次下請で死亡事故が発生した場合に遺族が安全配慮違反を追求する相手は、関連の業者全てという場合もあります。
建設業は休業4日以上の死傷者数が多い業種であり、全体の50%を占めています。労災事故が起こった場合には労災保険から従業員が負ったケガや病気、死亡等に対しての保険金が給付されます。ただし、被災した本人やその遺族に対して支払う慰謝料や賠償金などを含めると労災保険だけで果たして足りるでしょうか?
例えば自動車事故に備えて加入義務のある自賠責保険だけでなく、任意に車両保険などに加入してもしも事故が起きた時に安心できる補償が得られるような備えを行うでしょう。これと同様に労災事故についても、労災保険の補償だけに頼らず労災上乗せ補償を追加することで安心できる備えとなるでしょう。
もしも弁護士から訴状が届き、そこには慰謝料や逸失利益を含めた数千万円という請求金額が記載されていたらどうしますか?ますます建設へのニーズが高まる中、これからは自社の従業員以外の労働者の事故についての補償も備えておくことが必要です。労災ではまかないきれない民事賠償金についての補償を確保できるようにしておきましょう。
また、国土交通省は建設企業が遵守すべき元請と下請の取引ルールを策定しています。労働災害防止対策を実施し経費を負担する者を明確に区分することを目的としており、現場で元請・下請の労働災害防止に対する意識向上を図っています。