全産業の中でも建設業は災害発生率が高いことは事実です。建設業の労働災害の発生率は、全産業の中でも4日以上の休業を要する労働災害の約3割、死亡災害の約4割という高い数値です。
建設業は危険を伴う作業が多く、足場や建設物からの墜落・転落での災害、クレーンや建設機械、自動車等による機械関連災害、崩壊倒壊災害が建設業での災害の約9割を占めています。その多くは中小規模の事業場で発生しており、高年齢の労働者が被災しる死傷する災害が多く見られます。厚生労働省では建設業における労働災害による死亡者数を、平成24年の367人から平成29年までに20%以上減少させることを目標としています。
全産業での平成27年の死亡者数(平成28年1月7日現在)は、死亡災害報告によれば885人になっており、前年同期と比較すると8.7%の減少したことになります。さらに建設業における死亡者数は310人となっており、前年同期と比較すると13.6%減少したことになります。建設業における死亡災害で前年よりも事故のタイプで減少数が大きいものは、墜落・転落で15.1%減少、次いで道路上の交通事故、溺れと続きます。その一方で増加しているものが、高温・低温物との接触、飛来・落下、激突などです。
建設業においての労働災害は長期的に見ると減少しているのですが、死亡災害は全業種を通じ最も多いという状況です。そのようなことから厚生労働省では、平成27年7月に足場からの墜落防止対策の充実強化の対策として改正労働安全衛生規則を施行しました。これは高さ2m以上に設けられた作業床の床材と建地の隙間は12cm未満とし、足場の組立て作業に係る業務を特別教育の対象とするといった規制内容になっています。他にも平成27年6 月に「斜面崩壊による労働災害の防止対策に関するガイドライン」が策定され、死亡災害など重篤な災害が起きやすい土砂崩壊災害の防止に努めるなどの対策が行われています。様々な取り組みにより統括安全衛生管理の徹底や足場の設置が困難な高所作業での墜落防止措置、ハーネス型安全帯の普及促進を図る等が取り組みとして実施されることになり、建設業においての労働災害防止対策に繋がっています。
労災が発生すれば安全配慮義務より責任を追求されるものと考えておいたほうが良いでしょう。労災訴訟については年々高額化している傾向にあるため、もしも悪質性があると判断されれば刑事罰を科せられることもあります。国や各建設団体などのガイドラインに則って法令遵守や安全衛生管理体制の確立はもちろんのこと、安全教育を徹底していくことが重要となります。