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建設現場で増える一人親方の死亡事故も労災適用になる?

2016.10.31
分類:その他

個人で仕事を請負い建設現場で働く一人親方の死亡事故が増えつつあります。実際一人親方が仕事中事故死したケースでは労災事故の統計にカウントされていないこともあるようですが、これは雇用契約が企業と締結した労働者ではなく経営者とみなされていることが原因のようです。

 

 

一人親方でも労災加入は可能?

一人親方は建設業などで自身のみが事業を行っている人ですが、形式上は事業主となるため労災保険制度の枠外になります。しかし実態は労働者に近いケースもあるため、労災保険では「特別加入制度」が設けられています。この特別加入制度を活用することによって、一般労働者の労災と同様の補償を受けることが可能になります。

一般の労災との違いは?

雇用している労働者の労災加入は雇い主の責任ですが、一人親方の場合には雇い主が存在しないことにより労災制度に加入するかについては本人が決めることになります。しかし形式的には一人親方だとしても、実質的には労働者だと判断されて労働者性が認定されれば労災補償を受けることができるケースがあります。

労働者性の判断基準

これまでの行政の先例や裁判例によると、一人親方の労働者性の有無については次のようなポイントが考慮されて判断されます。

・指揮監督関係や裁量性の有無

・業務以外の業務に従事する可能性の有無

・報酬が労務に対しての対価なのか仕事の完成に対する対価なのかなど

・仕事の引き受けの選択権の有無

・仕事用の機械や器具の用意は誰が行ったか

・拘束性の有無

形式よりも実態が大切

過去には一人親方が日当で現場作業を依頼され、作業中に負傷し労働者性が認められたケースがあります。労基署では一人親方が作業現場で使用者側から指揮監督を受けていたこと、報酬が日当で労務の提供の対価としての支払いだったことなどから労災支給決定を行っています。一人親方が労災保険の特別加入制度の手続きを行っていなかった場合でも、労働者性が認められれば労災補償の対象になるのです。労災補償の対象になるかどうかについては、形式よりも実態が重視される傾向にあるようです。

元請け業者が損害賠償請求されるケースも

労災認定がされなかった場合でも、元請け業者の責任が問われるケースもあります。建設現場で安全対策や教育などが十分に行われていなかったことが事故の原因になり、一人親方がケガを負った場合や亡くなってしまった場合などです。その場合、一人親方が特別加入制度や労災補償制度で救済されなかったとしても、現場の安全義務の責任がある元請け業者に対して損害賠償請求が行われる可能性があります。元請け業者は建設現場で安全に作業が行えるように、しっかりと対策をしておく必要があるのです。