社会保障制度を持続するためには、給付範囲・提供体制・公定価格など見直すことが必要とされています。
介護保険の場合、
・軽度者に対するサービスを地域支援事業に移行する
・民間企業参入によりサービス価格の透明性を向上させ競争を推進させる
・ケアマネジメントの質向上
・利用者負担・在宅と施設の公平性を確保する
といったことが必要とされています。
しかし民間企業が参入し、サービス価格の透明性が向上することで価格競争が激化すれば、利用者は価格だけで事業所を選ぶようになってしまうでしょう。
それによりどのようなリスクが発生することになるのか説明していきます。介護事業所の中でも価格が安ければ利用する側にとってメリットは大きいと考えられますが、安かろう悪かろうでは意味がありません。
たとえば加算を多く算定している事業所の場合、それだけ質の高いサービスを提供しているとも考えられますが、結果的に価格は高くなるでしょう。
加算を算定できる状態も、利用者の負担が大きくなってしまうことを懸念し、算定しないという事業所も見られますし、加算の算定要件を満たしているものの文書作成などの手間が面倒で算定しない事業所もあります。
人員体制が変動したり事業所の方針が固まっていなかったりなどを理由として、加算を算定しない事業所も実際に存在します。
反対に加算を多く算定している事業所でも、スタッフの質が良くないため、加算対象者は事業所で選ぶといったケースも見られます。
ケアマネジャーが利用者に多くの事業所の価格を提示しても、それが希望するサービスに繋がるとは限らないのです。
利用者が事業所を価格で選ぶことになれば、事業所間では利用者を獲得しようとするため価格競争が起きます。
しかし価格競争は、介護保険が目指す質の良いサービス提供からの乖離を促すこととなるでしょう。
介護サービスは性質によって、政府の規制が適合しにくいといえます。市場で介護サービスの最低限の品質を担保するためには、価格を選択しから外すことが必要と考えられます。
価格と品質の両方を選択する要因としたとき、高価で高品質もあれば、安かろう悪かろうもある状態を作ります。
価格を選択肢から外して品質のみで選ぶことができるようにすれば、質の低いサービスを提供する事業者は、市場から淘汰されるようになるからです。
介護の品質は介護サービスを利用する方の生活の質に直結するため、ニーズに応じて細心の注意を払いながら事業所選びをするようになると考えられます。
その結果、事業所も利用者が納得してくれる質の高いサービス提供に傾注するようになり、介護ニーズに合致した質の介護市場が誕生することにつながることが期待できるでしょう。