介護施設に勤務するスタッフの数や職種は、介護サービスを提供する上で重要な項目です。
数が不足すればその分、スタッフ1人にかかる負担が大きくなり、介護サービスの質も低下してしまうでしょう。
しかし今、介護施設で働くスタッフの数は常に不足している状態ですが、不足がする原因としてマクロ経済的ショックが関係していると考えられています。
高齢化が進む日本では、介護サービスへのニーズもさらに高まると考えられるため、サービスの質をより良くすることが必要とされています。
そのための取り組みとして、一旦は介護施設で働いていたけれど離職してしまった介護福祉士を現場に呼び戻し、定着を図ることが重要といえるでしょう。
介護施設で介護スタッフが不足してしまう要因として考えられるのは、
・介護施設が地域的に買手独占状態にあること
・労働市場で求人が増え市場賃金が上昇したことによるマクロ経済的ショック
・介護報酬の引き下げによって起きる政策ショック
都道府県レベルの集計データから見ると、失業率が高ければ介護老人保健施設での死亡率は低下することが確認できました。この結果は米国のnursing homeのデータを用いて行った先行研究と一致しています。
ただ失業率が高まれば施設に入所している方あたりの介護職員数(介護福祉士)は増える傾向が示されましたが、介護福祉士の資格を保有していない介護職員数が増える傾向は認められていません。
さらに入所者あたりの介護福祉士数が増えたときに死亡率は低下することが示されましたが、介護福祉士の資格を保有していない介護職員が増えても死亡率が低下するという傾向は認められていません。
失業率が高まれば入所者あたりの介護福祉士の数が増えるのはなぜなのでしょう。その理由として考えられるのは、介護職員に支払われる給与のもととなる介護報酬は3年間固定されていることです。
今回の新型コロナウイルスの影響のように景気が後退していけば、様々な産業で失業者が発生し、解雇にならなくても労働時間や時給が低下してしまいます。
そのため景気の影響を受けにくい介護現場で働いたほうがよいのでは…と考える方が増えるでしょう。
このようなとき介護福祉士の資格が有利となるため、失業率が高ければ高い介護技術を保有する介護福祉士有資格者の供給も増えるといえます。
景気が悪くなれば老人保健施設における死亡率が低くなるという傾向は介護福祉士の動向が影響していると考えられます。
介護サービスの質に応じて価格を設定することが可能になれば、景気により介護福祉士が流出入することの抑制が可能となり、質の改善によい影響を与えることができるはずです。
介護報酬の適正な水準算出こそが介護職員不足解消につながる方策になることでしょう。