近年、報告された高齢者に対する虐待件数が増加しており、令和2年度では若干減少傾向となったものの、介護事業所の職員が高齢者に虐待する件数は増加しています。
介護事業所でも高齢者虐待をなくすために、様々な対策や研修を行っていると考えられますが、まだゼロにはほどとおい状況です。
そこで、介護事業所に求められる高齢者虐待を減少させるための対策について解説していきます。
高齢者が親族や介護事業所職員などからの不適切な扱いをすることで、高齢者の権利利益を侵害されることを高齢者虐待といいます。
生活や健康が害されるだけでなく、生命まで奪われるようなことはけっしてあってはならないといえますが、具体的には次のような行為が高齢者虐待に該当します。
・暴力的行為で身体に傷・アザ・痛みを与える行為
・外部との接触を継続して意図的に遮断する行為
・必要な介護サービスの利用を妨げたり世話をしなかったりすることで生活環境や身体的・精神的状態を悪化させる行為
・侮辱な言葉を浴びせたり脅したり、無視や嫌がらせで精神的苦痛を与える行為
・同意なく性的な行為を強要する行為
・合意なしに財産や金銭を使い込み本人の金銭使用を理由なく制限する行為
認知症で判断機能を失っている高齢者に対しては、虐待行為が複合的に行われることもめずらしくないといえるでしょう。
高齢者虐待をする介護職員の人間性が問題と考える方もいることでしょう。
しかし実際には、十分な現場における教育が行われておらず、介護技術などに問題が見られるケースが過半数を占めています。
さらに虐待を助長する組織風土がある場合や、現場の職員同士の人間関係が悪化していることなど管理体制に問題があるケースも多いといえます。
人員不足や人員配置に問題があれば、それぞれが担当する業務も増え、多忙によるストレスや過労の蓄積で高齢者虐待が増えやすくなるとも考えられるでしょう。
高齢者虐待は介護職員個人の問題ではなく、介護事業所全体で取り組むべき問題といえます。
高齢者虐待は介護職員のモラルのみの問題ではなく、職場の環境や管理体制、社員教育など様々なことが助長する要因となります。
そのため職場環境の改善を行い、職員のストレスケアなども実施することが必要です。
虐待防止のマニュアルを作成し、研修などを実施しつつ、虐待報告窓口も設置することが大切といえます。