日本の介護事業者の中で、中国に巨大な老人ホームなどの介護施設を開設し、ビジネスとして成功させようと考えている方もいることでしょう。
しかし、中国での介護市場で、日本の介護方法は通用するのでしょうか。
日本では成功した介護事業者だとしても、同じやり方を中国に押し付けても成功するとは限らないと認識しておくべきでしょう。
実際、日本企業が中国で老人ホームなどを開設し、成功させるには大きな壁があるためうかつに着手しないほうがよいともいわれていますが、その理由はどこにあるのでしょう。
中国で日本の介護事業者が老人ホームを運営しても、入居者や介護スタッフが思うように集まらず、撤退しなければならなくなる傾向がみられます。
中国をはじめとするアジア圏は日本と同じく高齢化が進んでおり、日本の介護施設を中国の事業者が訪問してきて、日本の介護は素晴らしいともてはやすこともあるようです。
しかし実際に中国で介護事業者が参入すると、現地法人の整理や統合、契約・提携先見直しなどを行わなければならないなど、かなり苦労してしまう結果となりがちです。
中国で日本の介護事業者が通用しない理由は、立地条件の失敗など、十分配慮しなければならない点がミスしてしまっていることに加え、中国人の地域ごとに異なる習慣、文化、嗜好が考慮されていないサービスを提供しようとするからのようです。
コスト意識やビジネス感覚なども中国の事情に合っていないことも理由として挙げられます。
中国で介護施設を運営し成功させたいなら、まずは利便性が高い都市部に開設すること、そして農村部などから出稼ぎできている介護スタッフに家族と同じような面倒と人材教育を行い本人のモチベーションを向上させることです。
モチベーションがあがれば介護サービスの質も高まりますし、家族のように扱ってくれることで離職率も低くなります。
そして中国の介護施設や老人ホームなどは入り口の受付周辺の雰囲気なども、中国人が好む派手で立派なつくりにしたほうがよいでしょう。
トイレの位置なども、日本は介護スタッフが作業しやすい場所へ配置する傾向が見られますが、中国人にとってはそれが方角的にありえない場所である場合もあるようです。
建物設計も、上海などの都市部は新築が難しいので、既存物件の改築を行う際にも防火対策や間取りなどで制約を受け、ハードルの高さを感じてしまう部分といえます。
さらに日本の介護では、利用者の残存機能を維持させつつ自立を支援するサポートを行うため、できることはなるべく自分でやってもらう形です。
しかし中国ではこのような考えではないため、頭ごなしに介護スタッフに命じたり強要したりすれば、トラブルに発展させるだけといえます。
中国にとって、介護は生活に密着した究極のサービス業と位置づけられていますし、属人的な要素の影響も大きいことを理解し、一方的に日本のやり方を押し付けては成功しないといえるでしょう。