親が亡くなり、その3人の子が相続人となり親の財産を分けることになったときにおいて、子のうちの1人だけが親の介護を行っていたという場合には、同じように財産を分割することに不満を抱えることになるかもしれません。
しかし亡くなった方にどれだけ貢献したかについては、遺産相続では考慮されることはないのです。
ただ、亡くなった親も自分の面倒を最後までみてくれた子には、より多くの財産を引き継いでもらいたいと思うものでしょう。
この場合、どのような対応が求められるのでしょうか。
どの相続人が亡くなった方に対して献身的に介護を行っていたのか、実際にその姿を見ていなければ確認しようがない部分もあります。
そこで、生前に遺言書を残しておくことで、特定の相続人に財産を多く相続させることができます。
ただし遺言書を作成するときには、その他の相続人の遺留分に配慮した内容でなければなりません。相続人には、最低限財産を相続できる遺留分というものがあり、その遺留分を侵害する遺言書が作成されていた場合には遺留分を請求されることになるからです。
遺言書が残されていない場合は、相続人同士で遺産分割を行いどのように財産を分けるか決めることになります。このときに目安となるのが民法で定められている法定相続分ですが、たとえば子3人が相続人の場合、法定相続分に従うことになれば、それぞれが3分の1ずつ財産を引き継ぐことになります。
ただ、他の兄弟姉妹は親の面倒をまったく見ていなかったのに、親が亡くなった途端に財産は平等に分けることが当然だと主張されても、介護を献身的に努めた相続人にとっては不公平に感じるものでしょう。
この場合は、他の相続人に対して相続の際に寄与分を主張することができます。寄与分とは相続人が亡くなった方に特別の寄与を行った場合認められ、本来相続する財産分にプラスして与えられます。
亡くなった方の財産の維持・増加に、労務提供や療養看護、資金提供などで貢献した方が対象ですが、ただ、特別な寄与をしたことを客観的に証明できるものが必要になります。
また、認められるためには、介護を行ったことにたいし報酬が発生していないこと、1年以上(3~4年など)に渡り介護などに従事したこと、片手間で介護を行っていなかったこと、亡くなった方の配偶者または子、兄弟姉妹であることといったなどすべての要件を満たす必要です。
さらにこれまでは、親と同居していた子の配偶者などが介護を行っていたのにもかかわらず、その親が亡くなっても子の配偶者は相続人ではないので貢献度が評価されないという状況でした。しかし2019年7月からは、法改正によって特別寄与料を相続人に請求できるようになりました。
法律上の相続権がない方でも特別寄与料の請求は認められますが、親族以外の第三者には認められていない権利ですので、介護施設のスタッフやホームヘルパーなどにはその権利はないので間違わないようにしましょう。