福祉業界が問題となっている人材派遣を利用することのデメリット
福祉業界の深刻な問題として取り上げられるのが、人材不足と介護報酬削減による問題です。
人材不足を理由に人材派遣などを利用すると、本来なら介護事業所に入る予定の介護報酬を事業所内で働くスタッフの人件費に充てることができないといった問題が起きてしまいます。
介護人材を紹介してくれる業者には、人材派遣会社や有料紹介会社、求人広告の会社などいろいろありますが、事業所内で働くスタッフ職の給料が低賃金のままという要因になっているようです。
人材派遣を頼るしかない理由
特に人材派遣や有料紹介会社など、人材会社に対する売上の流出が深刻化しているようです。
介護スタッフを募集しても多くがインターネットをメインとした方法となるため、検索をかけても上位に並ぶのは人材会社のサイトばかりです。
仮に中小の介護事業所などがインターネットで募集をかけたとしても、見つけてもらえない上に応募してもらえない状態といえます。
条件がよいからと人材会社によい人材が流れてしまうので、その人材会社を経由して派遣による介護スタッフを補えば、結果として利益を吸われ続けてしまう構造になるのです。
実際に人材派遣で紹介してもらうと?
仮に人材会社に登録している介護福祉士を紹介してもらうとしたら、1人雇うために紹介料として15万円から50万円を半年ごとに支払い続けることになります。
中小の介護事業所などは毎月の利益が一気になくなる金額であり、赤字経営となって場合によっては破綻してしまうかもしれません。
慢性的な人材不足の中で人材の募集をかけたとしても、誰も集まらなければ人材会社を頼らなければならない状態となります。
介護報酬は本来であれば介護スタッフに分配することを前提とした制度設計になっているはずですが、実際はスタッフに分配される前段階でその資金が介護事業所からなくなっている状態なのです。
介護スタッフの労働環境改善が必要
介護事業所を運営するためには、家賃、水道光熱費、人材教育費など様々な固定費が発生するものですが、そこに人材会社に対する支払いが発生すれば人材確保にまで資金をかけることはできません。
介護事業所で働いている多くが非正規雇用であるなど、職場環境が改善されなければいくら募集をかけても人材は集まらない状態が続きます。
それでもスタッフたちが必死になって働き、得た介護報酬であるはずなのに、人材会社に吸収されてしまうのは納得がいかないものでしょう。
この負の連鎖を断ち切るための国の対策などが必要であると考えられますし、新たに設けられた制度などで少しずつ改善されつつある介護スタッフの労働環境が、さらによい方向へ進むことが期待されます。