建設業界の市場規模が復調したその背景には、東日本大震災の復興需要や東京オリンピック需要などが関係します。
資本家の中にも、急増した工事量と利益率の高い案件増加に注目し、将来性が見込める建設業者を買収したいと考える方もいるようです。
しかしその一方で、民間建設投資はピーク時の半分の水準まで縮小することが予想されており、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり先行きが不透明な状況となりました。
ただ、世界的な建設市場は日本の10倍程度と推計されており、新興市場を中心として持続的な成長が期待できる業界とも考えられています。
被災地でのインフラや防災強化などの震災復旧工事や、省エネ・老朽ビルや施設の耐震構造への建て替えや新設などが、今後は増えていくことが見込まれています。
しかし実際には全体の工事量は増えておらず、影響は限定的であり競争は今後さらに熾烈になると予想されます。
このような背景から、大手ゼネコン各社でも海外受注を拡大しようと打ち出しているものの、海外進出に伴う交渉と契約までの流れの構築、リスク管理体制強化など様々な課題は残されたままです。
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、さらにその課題は大きいものとなってしまいました。
東京オリンピック・パラリンピック関連の大型受注などで、都心の建設業の業績は伸びる一方、地方との格差が問題ともされていました。
さらにスーパーゼネコン・準大手・中堅ゼネコンと比べると、公共工事受注に必要な経営事項審査の点数も地方の中小企業のほうが低めであり、公共工事を受注することは困難な状況ともいえます。
深刻な人手不足の問題も解決されておらず、過酷な労働環境に賃金も高くないといったマイナスイメージが若年世代に浸透し、若者の入職者は減少傾向にあります。
今後、高齢の就業者がリタイアすれば、現場で働く就業者数はさらに減少してしまうこととなるでしょう。
このような建設業界が抱える様々な問題に向き合おうと、M&Aなどに積極的な資本家なども注目する動きが見られます。
ただ、建設業界は長年に渡るその特性によって、業界再編は起きにくいと言われていました。
その要因として挙げられるのは、
生産規模拡大に応じて利益を得る規模の経済は働きにくいこと
2社以上の企業が合併し1社になれば、公共工事入札参加機会が限定されてしまうこと
などです。
どちらもデメリットが大きく、M&Aにメリットを感じないという建設業も少なくありません。
実際に行われたM&Aの例として、入札できる営業エリアが限定されることから、同一地域や隣接地域によるM&A、または有能な現場監督や建設業免許を獲得することを目的としたM&Aなどが挙げられます。