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建設業で勤務成績不良の従業員を解雇したいときの職務遂行能力の判断基準とは

2023.09.27
分類:総務

長年に建設業で働いていた従業員が、たとえば身体的な不調などを訴え現場ではない事務業務に異動することを希望したとしましょう。

 しかし現場も人手が足りておらず、希望する異動には対応できないと伝えると、無断欠勤など勤務成績不良が続き現場にこなくなってしまったらどうするでしょうか。

 最終的には解雇することを検討すると考えられますが、実際に勤務成績不良の従業員を解雇することは可能なのか、職務遂行能力の判断基準など解説していきます。

労働者に課せられた労働義務とは

 労働者に課せられた労働義務とは、会社と結んだ労働契約に基づいて働くことです。

 労働者が働かいて労務を提供しない場合には、労働義務を果たさなかったことになり、会社は労働契約解約の上解雇することが認められます。

 ただし解雇は、客観的に合理的な理由が認められ、社会通念上相当といえる理由でなければ権利濫用として無効になることもあるため注意してください。

  

職務遂行能力の判断基準とは

 労働者が働いて労務を提供しなかった場合には、労働義務を果たさなかったことになります。

 職種を特定しない雇用での労務提供は、就業を命じられた特定業務については十分でなかったとしても、他の業務で労務提供でき、提供を申し出ていれば履行の提供があるとしています。

 そのため労働者の職務遂行能力は、社員が今従事している業務だけでなく、配置できる業務も基準に判断されるといえるでしょう。

  

職務遂行能力が十分でない場合の解雇について

 職務遂行能力は従事している業務だけでなく、配置できる業務も基準に判断されるとすれば、どのような程度の職務遂行能力不良なら解雇できるのでしょう。

 過去の判例をみると、以下の事情を考慮し勤務成績・勤務態度の不良を理由とした解雇であっても無効としています。

 ・会社経営や運営に対する支障や損害または重大な損害のおそれがあり、会社からの排除が必要である

・注意しても改善されないなど今後も改善される見込みがない

・会社側に不当な人事がなく公正な人事だった

・配転・降格の可能性

 この判例からもわかるとおり、社員が配置された職場で業務上トラブルを起こしていた場合でも、それのみで労務の提供がないと判断し解雇することはできないと考えられます。

 具体的な事実関係など把握しつつ、本人に対する指導や配置転換なども踏まえた検討が必要になるでしょう。