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病毒伝播のリスクに関する就業制限とは?就業が禁止されるケースについて解説

2023.11.25
分類:総務

建設業では、従業員が疾病や感染症にり患したときには、法令に基づく就業制限の対象になることの理解を深めておきましょう。

1つの工事現場では、いろいろな専門職が複数人集まって作業をするため、感染症の拡大を防ぐためにも、病毒伝播のおそれのある従業員には休業を命じなければならないこともあります。

そこで、病毒伝播のリスクに関する就業制限と、就業が禁止されるケースについて解説していきます。

従業員が就業を禁止できる場合

 従業員が感染症に罹患していることを理由に就業を禁止できるケースは限定されています。

 労働安全衛生法に基づく制限は、「結核」に限定されているため、かなり限定的であるといえるでしょう。

 これは、平成12年に労働基準局が出した都道府県労働基準局あての通達によるものです。

 通達で、病毒伝播のおそれのある感染性の疾病は、伝染させるおそれが著しいと認められる結核としているからです。

 産業医や人事労務担当者などは、このような情報に精通しておくことが重要といえます。

 さらに労働安全衛生法では、伝染性疾病やその他の病気にかかった労働者については、就業を禁止しなければならないことが記載されています。

 具体的には以下のとおりです。

 “労働安全衛生法第68条(病者の就業禁止)

事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、厚生労働省令で定めるところにより、その就業を禁止しなければならない。“

 この規定により、就業禁止の対象となるのは、伝染性の疾病その他の疾病で厚生労働省令により定めるものにかかった労働者です。

  

就業禁止を命じた場合の賃金の扱い

 仮に事業者が法令に基づくことなく、労働者が労務を提供できることを主張しているのに休業を命じたときにはどうなるのでしょう。

 この場合には、事業者が「使用者の責めに帰すべき事由」で従業員に休業を命じたこととなるため、労働基準法の26条に基づいた休業手当を支給しなければなりません。

 “労働金順豊第26条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない”

 平均賃金の6割以上の手当を従業員に支給することになるため注意してください。

 なお、結核に罹った従業員を休業させるときや、感染症法に基づく休業においては、使用者の責めに帰すべき事由に該当しないため休業手当を支払う必要はありません。