建設業は敬遠されがちな職種である上に、少子高齢化などで常に人手不足という状態である中、最近では震災復興や東京オリンピック需要などで建設ニーズが高まり、労働者の負担が増えてしまっている傾向がみられます。
ただ、建設業独自の下請けや孫請けといった多重請負構造により、下位層に位置するほど請負代金は少なくなることから、労働者は長時間労働に従事する必要があっても残業代がしっかり支払われていない状況が常態化していることが問題です。
残業代がしっかりと支払われていないということは、労働時間などの管理が適切な状態で行われていないことを指しています。
そのため、労働者が働いた分を請求したくても、本当に働いたのか証明するすべがないという場合もあるようです。
ただ、このような労務管理の体制は通用しませんし、法改正などでより労働時間の管理が厳しくなるため環境を整備していくようにしましょう。
現在、時間外労働は原則、月45時間かつ年360時間まででおさめることが必要とされ、特別な事情があり労使間の合意があれば上限を超えることが可能となる特別条項付き36協定も設けられています。
それでも年720時間、休日労働を含む月100時間未満、複数月平均80時間が限度となりますし、45時間を上回ってよいのは年6回までです。
ただ、2018年6月29日に成立した「働き方改革関連法」により、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から適用となります。ただし、建設業は5年間の猶予期間が設定されているので、完全に実施されるのは2024年4月からです
完全実施されれば残業上限も規制され、残業上限は原則、月45時間かつ年360時間以内までと定められることとなります。仮に特別な事情があったとしても、月100時間未満、年720時間までの残業時間に留めなければなりません。
たとえば作業員が事務所などに一旦集まり、そこから社用車を使って工事現場に向かい、さらに作業後はまた事務所に戻って1日が終了するという場合、移動時間も労働時間に含まれるのかという部分が問題です。
工事現場まで往復するための移動時間も必然的に労働時間に含まれるとはいいきれませんが、一度事務所で現場作業に必要な作業の積み込みなどを行ってから、さらに事務所に戻った後でその器材を戻し片づけを行うという場合など、移動中の車内で作業における打ち合わせなど行っていることもあるかもしれません。
このような場合、事務所に出勤してまた事務所に戻り、退社するまでが労働時間ですので移動も労働時間としてカウントされます。移動時間も含め、もし1日8時間という労働時間を超えているのなら、残業代が発生していることになるでしょう。
働いた分はしっかりと労働者に貢献することが必要です。残業代の不払いが発生しないように、労働時間が明確に確認できるよう、労務管理は徹底して行うようにしてください。