建物の新築や解体の工事では、騒音が発生したり粉じんが飛んだりといった問題以外に、振動により周辺からクレームを受けることもあります。
特に地盤改良工事を行うときの地面の掘削や杭の打ち込み、建物解体工事の躯体破壊では振動が大きくなりがちです。
他にもダンプやブルドーザーなど、重機による振動が発生してしまいますが、付近の地盤が緩いときなどは近隣の建物や隣家の外壁にひび割れを発生させてしまうこともあります。
では、工事による振動で隣家が破損したとき、誰がその責任を負うのか、所在について解説していきます。
建設工事の振動で隣家を破損させた場合、振動と破損に因果関係が認められれば、施工業者が不法行為責任を負うことになります。
ただ、損害賠償請求においては、工事中に発生した振動が原因で破損したことを証明しなければなりません。
しかし証明することは容易なことではなく、振動による破損なのか、経年劣化による破損か区別がつきにくいといえます。
また、工事中に測定器で振動の大きさを記録していなければ、振動の大きさの客観的な証拠が残らず、証明できません。
実施、工事で発生する振動が建物にどのように影響するのか、データが十分でないことも関係しています。
一般的なデータだけで具体的事例の因果関係を証明することは難しいといえるでしょう。
厳密に検証できない場合でも、振動と破損の因果関係が認められる場合はあります。
たとえば工事前後の隣家の状態の記録から、経年劣化がみられなかったのにも関わらず、外壁の損傷や建物に傾斜などが発生したときには因果関係があると認められるでしょう。
原則として、振動により隣家が破損した場合でも、発注者が責任を負うこともあります。
たとえば、注文者に注文や指図に過失があった場合です。
発注者の過失が認められるケースとは、工事による振動で被害が生じていることを認識していたときや、被害が発生することが確実に予想できていたのに、工事を続行させたケースなどが挙げられます。
予算や工期の都合により、振動による被害が発生するとわかっていながら工事を続行させたときや、被害が発生していることを知っていたのに何の対策もせず工事を進めれば、発注者の過失と認められるでしょう。
さらに施工業者も、葉注射と連帯して共同不法行為による責任を負うことになると考えられます。