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工事中の建物や材料が損壊・破損したときの責任は誰が負う?

2020.04.23
分類:リスク
工事中の建物や材料などの損壊があったとき、保管責任を問われることになるため注意が必要です。そこで請負者が守らなければならない注意義務についてご説明します。

工事において建物や材料が損壊・破損したとき

民法第400条では善管注意義務として、

「債権の目的が特定物の引渡であるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。」

と規定がされています。

これにより、建設業界でも請負者が管理者として注意義務を払った上で建物や材料を保管し、引き渡しを行うことが求められます。

万一工事の引き渡し完成までに建物や材料などが損壊した場合には、その損害を請負者が負担しなければなりません。

では具体的なケースでみた場合、どのような対応が必要なのか確認しておきましょう。

もし台風が発生したことで材料が水浸しになり使用不可となったら

台風被害は建設工事の現場にも様々な損害を及ぼしますが、地震とは異なり台風が通過、または上陸の予想は事前からできるはずです。そのため、事前に材料にカバーをかけるといった対策は可能なため、それらを怠ったことで被害に遭ったのなら、善良な管理者として注意義務を果たしていなかったと判断できるでしょう。

損壊・破損してしまった材料については、請負者の責任のもとで取り替えなければならなくなります。

ただ近年では想像を超えるような自然災害が発生することもあるので、一律に善管義務を問うことは難しい状況ともいえるでしょう。

石膏ボードやグラスウールなどが雨で損壊・破損した場合

水に弱い材料である石膏ボードやグラスウールが雨に濡れたことで使い物にならなくなったという場合はどうでしょう。そもそも水に弱く濡れれば機能が低下してしまうことは把握できていたのなら、安易な養生だけで放置してしまうことはないはずです。

そのため、雨で損壊・破損してしまったのなら、善良な管理者としての注意義務を果たしていたとはいえず、賠償義務を負うことになるでしょう。

工事中の建物が放火被害に遭った場合

放火された状況にもよりますが、たとえばドアや窓が施錠可能な状態だったのに施錠しないで工事を終え、何者かが侵入して放火したという場合には善良な管理者として注意義務を果たしていなかったと判断されても仕方がありません。

火災等不可抗力による損失の負担は、注文者と請負者で協議して決定することになるでしょうが、善良な管理者としての注意義務を果たしていなかったという部分については否定できず、請負者が負担するべき部分であると考えることが普通です。