建設業界では、元請と下請が存在する重層下請の請負構造で仕事が行われます。
発注者から直接、工事を請け負うのが元請であり、そこから仕事を請け負うのが下請です。
そこで、建設業における元請と下請の関係や、業界特有ともいえる請負構造により発生しやすいトラブルについて説明していきます。
元請は工事を一括で下請に丸投げすることは禁止されていますが、入札を伴った公共工事や民間工事でも同様の扱いです。
元請から業務が発注され請け負うのは一次下請ですが、規模の大きな工事では、一次下請からさらに次の孫請業者に仕事が発注され、さらにその次のひ孫請業者にも仕事が発注されていきます。
このようなピラミッド型の請負構造では、5次下請などまで続くこともめずらしくありません。
特定業者が受注する工事が下請総額4千万円以上の契約の場合、施工台帳を作成することが義務化されており、一次下請け・孫請(二次下請)・ひ孫請(三次下請)まで記載することが必要です。
なお、下請として仕事を受注するためには、一般建設業許可を取得しておくことが必要となります。
元請となる企業は1社であることが一般的ですが、一次請けとなる企業は複数の場合もあり、専門性の高い業者もあれば建設工事全般を受注する業者もあります。
孫請けは一次請業者と契約し業務を行う業者ですが、別名、二次請けや二次下請と呼ばれています。
下請けは孫請けに丸投げすることはできず、再下請負通知書を元請に提出し孫請に仕事を依頼したことを報告しなければなりません。
元請と下請で起きやすいトラブルとして挙げられるのは、主に金銭に関するものが多いといえます。
下請が作業を進めていく段階では、追加の業務も必要となるケースがあるため、受注額を増やしてほしいと元請に申し入れることもあります。
しかし元請が応じなければ下請は泣き寝入りしなければならなくなり、中には工事の途中で投げ出す可能性も出てくるでしょう。
元請は予定通りに工事を完成させることができなくなるため、発注者から賠償請求されるだけでなく、信用も失墜してしまいます。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、元請と下請の双方が納得できる契約を書面で交わし手置くことが必要です。
元請は下請よりも優位な立場にあるものの、業務の責任を負い、安全管理など指導・監督しなければならないというリスクも負っています。
いずれにしても双方が立場を理解し、納得できる契約書類を作成し未然にトラブルを防ぐことが必要といえます。