介護福祉事業情報ラボNursing care work Information Lab

介護施設の中で有料老人ホームを不動産として所有するビジネスには落とし穴が?

2020.06.02
分類:経営

一時期、有料老人ホームなどの介護施設の建設が増えたことがあり、まさに建設ラッシュといえる状況でした。

その背景には特別養護老人ホームの不足による待機者の増加で、需要を見越して建設が次々と行われたのです。

実際、この建設ラッシュで増えた介護施設という不動産ですが、当時は入居の際に数千万円の入居金が必要という場合でも入所者で埋まるなど、公的施設では対処できない部分を超えてニーズがあったからといえます。

ハードルの低い立地条件で次々に建設が

当初、有料老人ホーム建設で必要な不動産や用地に求められるハードルはそれほど高いとはいえず、周りに何もないような場所に次々と建設されました。

なぜなら入居者は通勤や通学しないので交通の利便性は重視されることはないですし、広さは求められても通常の集合住宅のような不動産なら必要条件となる部分が必要とされないので、周囲に買い物スポットなどがない閑静なエリアでも問題ないと判断されたからです。

中には事業者自らが土地などの不動産を購入し、介護施設を建設して開所することもあったようですが、介護施設の所有と運営はそれぞれ別の方が行うケースも多くありました。

もともと住宅用地としてはニーズがない土地の活用が可能となる方法として、有料老人ホームの建設は有効と考えられたからでしょう。

 

増えすぎた有料老人ホームにより…

一時的によいビジネスと思われたものの、あまりに有料老人ホームが次々と建設されすぎてしまい供給が飽和状態になってしまいました。

施設同士が入居者を奪い合う競争が起き、労働環境に見合わない賃金の低さなどで介護業界全体が人手不足に陥るといったことが起きてしまったのです。

その結果、運営が難しくなった有料老人ホームも増え、撤退に至る施設まででてくることとなってしまいました。

 

契約解除で最もダメージを受けたのは?

契約上、解約不可とする期間は設定されているものの、数十年に渡る契約は締結されていないので、10年や長くても20年経てば自由に解約を可能とするケースが多いからといえるでしょう。

施設を運営する事業者は、解約可能となる期間を過ぎてから撤退すれば問題ありません。

しかし地主側にしてみれば、長く利用されると思い建築した不動産のローンの支払い期間がまだ残っている状態となり、新しい借り手がみつかればよいですが供給過剰により難しい状況に陥ってしまうのです。

しかし介護施設という建物の特性上、転用も難しくどうすればよいかわからないという状況もみられます。まだ建設から日が浅いのに、撤退という形になってしまうのはこのような事情があったからと考えられます。