介護事業者の中には、運営する介護施設に北欧式トランスファーテクニックを採用しようと考えている方もいることでしょう。
北欧式トランスファーテクニックとは、デンマークに在住している小島ブンゴード孝子氏が日本に紹介している移動・移乗介助法のことです。
介護をする側とされる側、どちらにもメリットがあることが特徴ですが、具体的にどのような方法なのか説明します。
北欧式トランスファーテクニックとは、利用者を抱え上げずに利用者本人の協力も得ながら、移乗や移動の際にはスライディングボードやスライディングシートの上を滑らせて行います。
デンマークは福祉先進国と呼ばれており、住み慣れた地域で自分らしく生きていくという考えが浸透している国です。
高齢や障がいなどを理由に身体機能が低下しても、残った機能をできるだけ活用し生活の質を維持させていくことが当たり前の国なので、介護を行うときにも利用者の自主性を尊重し不必要な手助けまでは行いません。
どれほど時間がかかったとしても利用者を見守ることに徹する考え方ですが、北欧式トランスファーテクニックもこの福祉観の中から生まれたと考えられます。
北欧式トランスファーテクニックは、安全・適切に実践するための考え方によるもののため、その基本を理解した上で技術を身につけることが必要となります。
北欧式トランスファーテクニックの考え方の基本は次の7つで、
・人を持ち上げないこと
・利用者の残存能力を活用すること
・自然な動きで介助すること
・摩擦を取る・利用すること
・てこの原理を水平方向に利用すること
・傾斜を利用すること
・前傾姿勢や身体をひねる姿勢はとらないこと
です。
従来の介護技術と異なるだけでなく、跳ね上げ式の車椅子にスライディングボードやスライディングシートなどの必要用具も揃えなければならないため、簡単に現場に浸透させることはできません。
これまでの方法よりも時間がかかる場合もあれば、なじむまで大変と感じるケースも少なくないため、現場から不満の声が漏れることも考えられます。
しかし勉強会など開催し、現場への導入を成功させた結果、介護スタッフの腰痛が改善したりコミュニケーションの質が向上したりなど、腰痛を原因とした介護離職者がゼロになったケースもあります。
介護する側とされる側、どちらにもやさしい介護方法なので、腰痛に悩むスタッフが多いときには検討するとよいでしょう。