東京商工リサーチが行った調査によると、2020年1~12月の老人福祉・介護事業者の倒産件数は118件に達しており、過去最多となりました。
2000年に介護保険法が施行され、それまで過去最多とされていた2017年と2019年の111件を上回る結果になったわけですが、これは新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用控えなどが進んだことが関係しています。
経営が悪化してしまったことにより、コロナ関連倒産した介護事業者も7件発生しており、人手不足で経営難が続く小規模事業者に対して追い打ちをかける結果になったといえるでしょう。
コロナ禍ですべての介護事業者が厳しい経営というわけではなく、たとえば特別養護老人ホームの経営状況は回復基調にあります。
福祉医療機構が2021年10月に公表した「2020年度介護・福祉施設の経営状況に関するレポート」によると、2020年度の特別養護老人ホームの収益の状況は増収と横ばいの施設が8割を超えています。
しかし特別養護老人ホームに併設されている通所介護の場合、その半数近くが減収しており、コロナ禍の影響を色濃く受けてしまっているようです。
具体的には次のような結果となっています。
・特別養護老人ホームの経営状況…サービス活動増減差額比率は従来型が横ばい、ユニット型は人件費率などの上昇で0.5ポイントの低下している
・通所介護事業所の経営状況…利用率低下に伴って大規模型ではサービス活動増減差額比率が前年度より大幅に低下。緊急事態宣言対象地域では対象外地域より利用率低下が顕著化し、サービス活動収益が大きく減少している
・就労継続支援B型事業所の経営状況…利用率への影響が少なかったため、サービス活動増減差額比率は7.7%で前年度から0.6ポイント上昇しているものの、都市部を中心に就労支援事業収益や利用者に対する工賃は減少している
以上のことから、特別養護老人ホームの経営状況を見ると従来型・ユニット型はそれぞれ異なるものの、前年度と比較すればそれほど影響はなかったといえます。
ただ、短期入所の利用率はコロナ禍で利用を控える方が増え、前年度に比べて大幅に低下しました。
デイサービスなど通所介護事業所の経営状況は、利用率が低下したことで前年度よりも活動増減差額比率が前年度より大幅に低下し、サービス活動収益が大きく減少してしまったといえるでしょう。
新型コロナウイルス感染拡大の影響は、特別養護老人ホームにはそれほど影響はなかったのに対し、デイサービスには大きな影響を与えるといった結果になりました。