介護事業者は、たとえ業務上必要性が認められるとしても、家族の介護をしている従業員を遠隔地に配置転換することについて慎重な検討が必要です。
人手が足りていない介護現場において、複数の介護事業所など抱えている場合は、限られた人材を遠隔地に配置転換する必要性も出てくる可能性があります。
しかし家族状況に照らすと、家庭生活上に不利益を与える場合には、家族の介護状況を把握することや本人意向、配置変更で就業場所が変更されることに関する家族の介護の代替手段の有無確認などの配慮が必要です。
そこで、介護事業者が理解しておきたい家族の介護を行っている従業員の配置転換について解説していきます。
従業員に対し、業務上の都合で出張・配置転換・転勤を命ずることができることについては、就業規則に定めておかなければ、配置転換などがスムーズにできません。
実際、このような内容の規定を就業規則に設けておくことにより、定めを根拠とした配転命令を発する権利の証明となります。
育児・介護休業法では、原則として配転命令は有効とされるものの、労働者に対して著しく不利益を負わせるものである場合は無効とされると考えられます。
たとえば労働者が家族の介護をしている場合などは、配転命令権の有効性に影響を与える可能性があるでしょう。
ただ、家族の介護をしている事情を抱えている労働者に対し、何の配転命令も出せないわけではありませんが、配転命令の発出前に人選や配転先について慎重な検討が求められます。
家族の介護を行っている労働者を、たとえば遠隔地へと配置転換するときには、配置転換の必要性を検討しましょう。
人員不足などで人員を補てんすることが必要であることを目的とする場合には、業務上は必要であると考えられるものの、その必要性がやむを得ない高度なものといえないと判断される可能性があります。
労働者の不利益性の大きさと、他の従業員を配置転換の対象にするなど、代替の検討はできないか踏まえた上での判断が必要です。
そのため、配置転換の対象となる労働者の家族の状況を把握することや、本人の意向、介護の代替手段の有無などを確認するなどの配慮が求められます。
以上のポイントを確認した上で、労働者の配置転換については慎重に検討するようにしましょう。