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介護事業者がスタッフを懲戒解雇することは可能?その要件について簡単に解説

2023.08.20
分類:総務

介護事業者が、介護現場で働くことにふさわしくないと判断したスタッフを、簡単に懲戒解雇することは可能なのでしょうか。

 そもそも懲戒解雇とは、社内の秩序を著しく乱した労働者に対する解雇ですが、日本では労働者としての立場は保護されているため、簡単にスタッフを解雇できないのが実情です。

 解雇する場合にも解雇予告や解雇予告手当の支給など、適正な手続を踏むことが必要であり、「明日から来なくてよい」と一方的に決めることはできません。

 特にスタッフに対し、ペナルティとして実施する懲戒解雇は、よほど特別な事情がなければできないといえます。

 そこで、介護事業者がスタッフを懲戒解雇することは可能なのか、その要件について簡単に解説していきます。

 

解雇の種類

 解雇の種類は次の3つに分けることができます。

 ・整理解雇(経営不振など経営上の理由による解雇)

・普通解雇(経営上の理由以外での労働者との雇用契約解除)

・懲戒解雇(労働者に対するペナルティとしての解雇)

 整理解雇と普通解雇は、労働者に対し30日前に解雇予告を行い解雇します。

 しかし懲戒解雇では、解雇予告なしで即時解雇となることが違いです。

 ただ、懲戒解雇であっても、即時解雇する場合において労働基準監督署による解雇予告除外認定を受けていなければ、解雇通告手当を支払うことが必要になります。

 

 懲戒解雇は就業規則への記載が必要

 懲戒解雇については、就業規則に明記が必要です。

 誰が客観的に見ても会社の秩序を乱す横領などの行為があったという場合でも、就業規則に「刑事犯罪に該当する行為を行った場合には懲戒解雇とする」といった内容の記載がなければ懲戒解雇できません。

 特に従業員10名以下の会社は就業規則を作成する義務がないため、就業規則もなく雇用契約にも懲戒解雇に関して明記がなければ、どれほど悪質な行為があったとしても懲戒解雇できなくなるので注意しましょう。

  

合理的理由・社会的相当性が認められなければならない

 懲戒解雇は、合理的理由や社会的相当性が認められることが必要とされていますが、懲戒解雇という選択が社会的に相当か問題となりえます。

 秩序を乱したとはいえるものの、会社に実損が発生していなかったり解雇しなくても秩序回復が可能だったりという場合、社会的相当性は否定される可能性があります。

  

懲戒解雇の退職金の扱い

 懲戒解雇では退職金が支給されない場合もあるでしょう。

 ただ、懲戒解雇されれば退職金の支給は不要というわけではなく、就業規則に「懲戒解雇された場合には退職金は支給しない」という旨の明記が必要です。