介護事業者がスタッフの給料を減給したいという場合、上限があるため限度額を超えれば違法と見なされることに注意が必要です。
そもそも給与の減給は、労使間でのトラブルに発展しやすいため、法律や就業規則も含めた正しい理解の上で決定することが求められます。
そこで、労働基準法に定めのある減給とは何か、賃金カットとの違いについて解説していきます。
減給とは、懲戒処分の一環として従業員の給与から一定額を差し引くことです。
本来、従業員に対して支払う給与は雇用契約で定められた全額を支払うことが必要ですが、従業員本人が不祥事を起こしたときや職務上の違反があったとき、会社の経営悪化などを理由とした労働契約変更による減給もゼロではありません。
賃金カットとは、勤務予定時間に仕事をされなかった場合に一定金額を差し引くことです。
労働契約に基づく労務提供不履行が発生したとき、労務不提供分を給与から差し引くことであり、制裁措置の1つともいえます。
従業員が働いていない分の賃金は支払う義務はないため、たとえば遅刻などで予定労働時間働いていないときや、出勤するはずだった日に欠勤したときには賃金カットされるといえます。
それに対し減給は懲戒処分の1つであるため、規律違反や不祥事発覚などを原因として、就業規則などに基づき一定額を減額するため、賃金カットとはそもそもの性質が異なります。
就業規則で減給の制裁を定める場合には、1回の減給が平均賃金1日分の半額を超え、総額が一賃金支払期の賃金総額10分の1を超えてはならないとされています。
たとえば月給が30万円の従業員の場合、1日の平均賃金は1万円となるため、半額である5,000円を超えて減給できないということです。
1回分の賃金支払い期間中に、たとえば複数の従業員が問題を起こしたことに対しそれぞれ減給処分を行う場合でも、複数の減給総額が1回で支払う賃金総額の10分の1を超えることはできないとされています。
1か月に複数の問題を起こした場合でも、月給30万円の従業員に対する減給は、3万円が限度となります。
この減給の限度額は、1事案ごとで平均賃金1日分の半額以下とされることで、減給額が賃金総額10分の1を超えることはほとんどないとといえるでしょう。
事業者は従業員の給与を減給するときには、この限度額に注意が必要です。