従来、通勤災害については業務外の災害とし健康保険などで保護されていました。しかし労働者災害補償保険法の一部が改正されたことで、現在は労災保険で保護される対象となっています。
では介護施設で働く労働者が、家族の介護を目的に通勤の前に事故を起こしてしまったとき、それは通勤災害に該当するのでしょうか。
通勤災害とは、労働者が通勤中にケガを負ったときや病気になったとき、障がいが残ったときや亡くなったときのことです。
労働者災害補償保険法(労災保険法)では、通勤災害における通勤とは労働者が就業に関して次に掲げる移動を、合理的な経路・方法で行うこととしています。
①住居と就業場所との間の往復
②就業場所から他の就業の場所への移動
③住居と就業場所との往復に先行または後続する住居間の移動
そのため労働者が通常の移動経路を使わなかったときや中断したときは通勤とされないといえますが、その経路逸脱や中断が日常生活上、必要な行為であり(やむを得ない事情を含む)最小限度のものであれば通勤とするとしています。
労災保険法では日常生活上必要な行為として、
①日用品の購入やそれに準ずる行為
②公共職業能力開発施設の行う職業訓練で教育訓練を受ける行為
③選挙権の行使やそれに準ずる行為
④病院または診療所で診察・治療を受けることやそれに準ずる行為
の4つを挙げています。さらに平成20年4月からは、
➄要介護状態にある配偶者・子・父母・配偶者の父母・同居し扶養している孫・祖父母及び兄弟姉妹の介護(継続または反復して行われるもの)
も追加されています。
では、介護のため通勤経路を逸脱した労働者がその途中で交通事故に遭ってしまったとします。しかし介護をする親族の家は会社を挟み自宅とは反対方向に位置しているとしたら、通勤災害の対象になるのでしょうか。
本来なら介護する親族の自宅までの往復で、通勤経路から逸脱する行為は「日常生活上必要な行為」とされます。
しかし通勤経路から一旦逸脱・中断した場合、逸脱または中断の間、その後の移動は通勤としないとも規定があります。そのため通勤経路に戻った後で事故に遭っても通勤災害には該当しません。
逸脱・中断には該当するものの、合理的な経路に復した後は通勤と認められる扱いなので、親族の家が自宅の反対の方向でも通勤経路上でも、逸脱している間は通勤災害には含まれないのです。